【毎週日曜連載】神さまが共におられる神秘(98)稲川圭三

あなたこそ私の神

2017年4月9日 受難の主日
(典礼歴A年に合わせ3年前の説教の再録)
エリ、エリ、レマ、サバクタニ
マタイ27:11~54

今日は受難の主日、枝の主日です。今日から聖週間が始まりました。来週の日曜はご復活の主日を迎えます。聖週間の始まりに、今日はマタイの福音書からイエスさまの受難朗読が読まれました。

その中でイエスさまがお話しになったのはたった2回です。「お前はユダヤ人の王なのか」とピラトに尋問されたとき、「それは、あなたが言っていることだ」と言われたのが1回(マタイ27:11)。そして、十字架上で詩編22編の言葉「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」と言われたのが2回目です(46節)。そのほかの場面では、イエスさまはずっと黙っておられました。その間、イエスさまは何をなさっていたのでしょうか。

まず、祭司長や長老たちが訴え、イエスさまに不利な証言をしているにもかかわらず、イエスさまは何も反論せず黙っておられました。そのとき、イエスさまはどうしておられたのでしょうか。歯を食いしばって怒りをこらえていたのでしょうか。

私はそうは思いません。イエスさまは、自分に不利な訴えをしてくる者や、自分を死に追いやろうとしている者の中にも、神が共におられるという真実に目を向けておられたと思います。

聖書で「忍耐」と訳されている言葉は、ギリシア語では「ヒュポ・モネー」という単語が使われています。「ヒュポ」というのは「そこに」、「モネー」は「留まる」という意味です。「そこ」とは、御父が共にいてくださるという真実の場所だと思います。イエスさまは、ご自分の内にいてくださる父である神さまの真実に留まり、また、目の前の人の中におられる父である神さまの真実に留まった方です。

イエスさまはこの後、裁判にかけられ、「十字架につけろ」という群衆の叫びを聞きます。祭司長たちに扇動されて、このように「十字架につけろ」と罵(ののし)る人々一人ひとりの中におられる神の真実に、イエスさまは留まったのではないでしょうか。

鞭(むち)打たれたとき、イエスさまは何をなさっていたのでしょうか。自分を鞭打つその者の中にも父である神が共におられるという真実があることを見て、そこに留まったのではないでしょうか。

十字架に引き渡されることが決まって、総督の兵士たちは総督官邸にイエスを連れていきました。そして、イエスさまは服を剥(は)ぎ取られ、「王様のマント」という意味で深紅の外套(がいとう)を着せられ、「ユダヤ人の王」なのだからと茨の冠をかぶせられ、王杓(おうしゃく)として葦(あし)の棒を手に持たされ、「ユダヤ人の王、万歳」と言ってみんなから侮辱されたんです。そのとき、イエスさまは何をなさっていたのでしょうか。このようなことをする一人ひとりの中に、永遠のいのちの神さまが一緒にいてくださるという真実を見ておられたのだと思います。

ついにイエスは十字架を負わされ、ゴルゴタの丘まで連行されます。そして、十字架に手足を釘づけにされ、十字架の上にさらされます。両側には犯罪人が右と左に十字架にかけられました。群衆は言いました。「神殿を壊し、三日で建てる者、神の子なら、自分を救ってみろ。そして十字架から降りて来い」(40節)

そう侮辱されたとき、イエスさまは何をしておられたのでしょうか。そのように言う人の中にも、父である神さまが共にいてくださるという真実に目を向けておられたのではないでしょうか。

祭司長も言いました。「他人は救ったのに、自分は救えない。イスラエルの王だ。今すぐ十字架から降りるがいい。そうすれば、信じてやろう。彼は神に頼ってきた。お望みならば、神が今、救ってくださるように。『私は神の子だ』と言っていたのだから」(42~43節)。そう侮辱された間、イエスは何をしていたのでしょうか。そのように自分の本当を理解しない者の中にも、父である神が共にいてくださる真実に目を向けておられたのではないでしょうか。

最後にイエスさまは大声で叫び、息を引き取られますが、そのとき、何をしておられたのでしょうか。そこにいるすべての人間、全世界の人間の中におられる神さまの真実に目を向けて死なれたのだと思います。そして、その真実に結ばれて復活されたのだと思います。

キリストはもうすでに私たち一人ひとりの中で復活してくださり、そして共にいてくださいます。キリストのことを知らないすべての人の中にも復活してくださっています。だから、そのことを私たちは告げなければならないのではないでしょうか。主の死と復活を告げ知らせる人間になっていけますように、この受難の主日にあたって、ご一緒に祈りたいと思います。

 






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