カトリック新潟教区(使徒座管理者:菊地功大司教)は25日、4月1日以降も当面の間、20人程度を超える不特定多数が参加する公開のミサを原則として中止するとともに、「聖なる3日間」を含む聖週間の典礼は非公開とすることを発表した。ただし、復活の主日は洗礼式などを行うため、諸条件を守り、聖堂内の人数を制限して感謝の祭儀を行ってもかまわないとした。
16日付の「新型コロナ・ウイルス感染症に伴う、公開のミサ中止期間の延長について」という文書で、「公開のミサは、3月31日(火)まで、原則中止となります」と通知していたが、4月1日以降、特に5日から始まる「聖週間」はキリストの十字架の受難を味わい、12日の「復活祭」(イースター)ではキリストの復活を記念する、1年の典礼暦で最も重要な時であり、最も人が集まる時なので、どう対応するかが注目されていた。
新潟教区が管轄するのは新潟県、山形県、秋田県の3県だが、新潟県で28人、秋田県で2人の新型コロナ・ウイルスの感染者が確認されている(25日現在)。
25日付の「新型コロナ・ウイルス感染症に伴う4月1日以降の新潟教区の対応」と題した文書の全文は以下のとおり。
新型コロナ・ウイルスによる感染症で亡くなられた世界各地の多くの方々の安息を祈ると共に、現在治療を受けられている方々の一日も早い回復をお祈りいたします。同時に、対策や治療のために日夜努力されている研究者、医療関係者の方々に、心から感謝し、その健康が守られるようにお祈りいたします。
宗教における信仰に生きるわたしたちは、祈りの持つ力への信頼を失わず、それぞれの場にいながらも、信仰に結ばれながら、祈り続けたいと思います。
今年の四旬節は、これまでにない厳しい挑戦を受け続ける40日間となってしまいました。私たちは、まさしく荒れ野をさまよう民のように、先行きの見えない不安にさいなまれております。感染症の拡大が要因とはいえ、四旬節中にミサにあずかることなく、また御聖体を受けることなく過ごすような事態となってしまったことは、非常に残念ですし心苦しく思っています。
私たちは祈りの内に結ばれて、キリストの体をともに作り上げる兄弟姉妹として信仰の内に連帯しながら、共にいてくださる主の導きに信頼し歩み続けましよう。弟子たちを派遣する主が約束されたように、主は世の終わりまで、いつも共にいてくださいます。(マタイ28章20節)
わたしたちは、ひとりで信仰を生きているのではなく、キリストの体である共同体のきずなの内に結ばれています。いまこそそのきずなが必要です。共同体にあってわたしたちは、すべてのいのちを守るようにと呼ばれています。自分のいのちを守るためだけではなく、互いのいのちを守るために、いまこそ思いやりの心遣いが求められています。様々な立場で感染症と闘っている専門家、病気と闘っている患者、社会的状況や経済的状況によっていのちの危機に直面している人々。すべてのいのちが守られるように、いまこそわたしたちの祈りと心配りが必要です。
今回の感染症にあっては、感染者の多くが無症状なままで回復していると報告されています。しかし大きな問題は、その感染者の多くが、無症状なまま感染源となり得ることにあります。
厚生労働省の専門家会議は、感染が拡大しやすい環境として次のように指摘します。
「これまで集団感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間であった、②多くの人が密集していた、③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です」
自覚症状がないとしても実は感染している人が存在する可能性があり、その方から、特に高齢で持病のある方に感染した場合、重篤な症状を引き起こす可能性があります。そこでこの三つの条件が重なるような状況を避ける努力が必要です。新潟教区でも公開のミサを自粛してきた一番の理由は、自分が感染しないようにするためではなく、意識しないまま感染源となり、他の方を危険にさらす可能性を避けるためです。
さて、3月19日の政府専門家会議の新たな見解に基づき、また秋田県、山形県、新潟県の感染状況を勘案した上で、4月1日以降の新潟教区の対応を以下のように定めましたので、具体的な行動をお願いいたします。
1 4月1日(水)以降も、当面の間、新潟教区のすべての信徒を対象に、主日のミサにあずかる義務を免除します。
2 いのちを守るため、高齢で持病のある方にあっては、自宅において共同体の祈りに加わるようになさってください。決して無理をして教会へお出かけにならないでください。
3 4月1日(水)以降、当面の間、20名程度を越える不特定多数が参加する公開のミサを原則として中止します。20名を下回る小規模なミサであっても、以下4の感染対策を十分にとってください。
4 諸行事に関しては、20名程度の小さい集まりを除いて、できる限り延期または中止するようにご配慮ください。実施する場合でも、手指消毒はもとより、換気を充分に行い、互いの間隔を大きくとり、短時間で終了するように心がけてください。また一緒に歌を歌ったり、聖歌集などを共用したりすることは避け、集まりでは飲食を伴わないようにします。
5 聖週間の典礼は、聖香油ミサをふくめ、復活徹夜祭まですべて非公開とします。聖なる三日間は非公開としますが、復活の主日にあっては、洗礼式などを行うために、上記4の諸条件とともに、聖堂内の人数を制限できる場合に限って、感謝の祭儀を行ってもかまいません。その場合でも、復活の祝賀会は行いません。
6 結婚式と葬儀については、充分な感染症対策をとった上で、通常通り行います。
わたしたちはいま、体験したことのない聖週間と復活祭を迎えようとしています。聖週間の毎日を、どうか大切にしてください。苦難に打ち勝ち復活の栄光に達した主の力に、わたしたちをゆだねましょう。信仰に生きる意味をあらためて見つめ直しながら、一日も早い事態の終息を、いつくしみ深い神である御父に祈りましょう。