2倍の祝福を受けて2人のダウン症児を育てる 益子昌貴さん

 

沖縄で2人のダウン症児を育てる益子昌貴(ますこ・まさき)さん(ネイバーフッド・チャーチ沖縄牧師)に話を聞いた。

左から益子昌貴さんとハンナちゃん、能子さんとホサナちゃん

益子さんがクリスチャンになったのは今から10年前。それまでの人生は、神様から遠く離れ、暗闇の中を歩いていたという。

高校時代はサッカーに打ち込んでいたが、引退と同時に人生の目的や日々の喜びを失ってしまった。友人に誘われ、興味本位でギャンブルを始めたところ、次第にのめりこみ、お金を際限なくつぎ込むように。親戚縁者だけでなく、あらゆるところから借金をし、嘘(うそ)の上塗りを重ねて、徐々に暗闇へと落ちていった。

再起をかけて、2008年、聖書を土台にした依存症更生施設「ティーンチャレンジ」の門を叩いた。ティーンチャレンジは、薬物・アルコール・ギャンブル依存症者の更生と社会復帰を支援する団体。1958年、米国ニューヨーク、タイムズ・スクエア教会のデイヴィッド・ウィルカーソン牧師によって始められ、現在では世界各国に1000を超えるセンターでその働きがなされている。

益子さんは、祖母、母、叔父、兄夫妻などがクリスチャンという家庭で育った。そのため、聖書を開き、賛美歌も歌ったことがあった。

入所してすぐに神様からの愛と慰めを感じ、悔い改めを決意。その3カ月後には洗礼を受けた。聖書の言葉は日に日に心を癒やし、暗い闇にまぶしい光を注ぎ続けた。

しかし、入所から6カ月後、厳しい現実に直面し、再び心が揺れる。「僕にはお金も仕事もない。どうやって生活をしていけばよいのか」

そんな時、「信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る」(1コリント13:13)という聖書の言葉に出会った。「ない」ものを数えるのではなく、「ある」ものを握りしめて歩んでいこう。自分には「信仰と、神様から与えられた将来への希望、そして深い愛がある」と感じたのだ。

プログラムを終えた益子さんは、ティーンチャレンジのインターンを経て、スタッフとして働き始める。自分と同じように依存症で苦しむ青年のサポートを始めたのだ。

2011年に起きた東日本大震災の直後、東北へ復興支援に向かい、そこで知り合った能子(よしこ)さんとその年の末に結婚。13年には第1子の妊娠が分かり、同時にティーンチャレンジのディレクターとして岡山に赴任が決まった。神様から与えられた希望が成就しつつある喜びの日々だった。

予定日の1カ月前、妊婦健診で医師から「お腹の子の成長が止まっている」と告げられ、妻が緊急入院。教会のメンバーと共に必死に祈った。

予定より1カ月早く生まれた長女は1730グラム。両手に収まるほどの小さな体だった。すぐに保育器に入れられ、検査が始まった。そして医師から「ダウン症です」と告げられたのだ。

その時のことを益子さんはこう語る。「その時、僕には恥ずかしながら知識がなく、どんな障がいなのか、よく分かりませんでした。とにかく、『この子がこの子らしく、精いっぱい育ってくれれば、それでいい。神様、ありがとう』という気持ちでしたね」

その子は「ホサナ」と名づけられた。旧約聖書ヘブライ語で「どうか救ってください」という意味だ。

ホサナちゃんは合併症もなく、すくすくと成長。他の子よりも歩き出すのも、話し出すのも遅かったが、その穏やかな成長は周りに喜びをもたらした。

「普通、2、3歳児の期間というのは、親にしてみれば、あっという間ですが、ダウン症の子の場合、その時期が普通の子の2倍くらいあるような感覚。ゆっくり成長しているわが子は、本当にかわいい。僕は、他の父親よりも2倍の時間を楽しんでいるのかもしれませんね」

16年には、もう一人、ダウン症児を養子縁組して迎えた。

「ダウン症の子を養子として迎えてくれないか」という話が来たとき、妻はほぼ即決だった。「うちの子として育てよう。ダウン症の子は、乳児院に入っても、なかなか里親が見つからない。ホサナの妹として、私たちで育てたい」

しかし、益子さんはなかなか決断ができなかった。ティーンチャレンジを退職して沖縄に移住し、牧師になったばかり。祈りに祈っていくうちに、再び聖書の言葉が心に留まった。

「あなたの神、主は、あなたと共に歩まれる。あなたを見放すことも、見捨てられることもない」(申命記31:6)

実母に見捨てられてしまったこの赤ちゃんに、こんなに愛してくださる神さまがおられることを伝えたい。そう決心して、次女ハンナちゃんを迎えることにしたのだ。同じくヘブル語で「恵み」を意味する。

「ダウン症児を2人、育てることになったけど、苦労はあまり感じません。ダウン症だから大変だという感覚もない。他の子と同じように、風邪をひく時もあれば、なかなか言うことをきかない時もあるけど、それ以上の喜びと希望があります。子育ては、これの連続ではないですか」

現在、ホサナちゃんは4歳、ハンナちゃんは間もなく2歳になる。愛らしい笑顔を浮かべる2人は、どこに行っても人気者だ。

「私が、ティーンチャレンジの門をくぐった時、10年後にこんな祝福が待っているなんて、誰が想像したでしょう。私自身ももちろん、自分が牧師になり、結婚し、2人のかわいい子どもに恵まれるなんて思ってもいなかった。神様の祝福はとめどなく降り注いでくるのですね」

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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