礼拝の暦の基本は「主の日」。そして、復活祭(イースター)は、「主の日」の年1回の特別版。その前後に重要な期節が展開し、それらが教会暦の中核部分となった──。本書は、その中核部分の各主日と、受難節の始まりとなる「灰の水曜日」と、受難週の「洗足の木曜日(掟の木曜日)」と「受難日」、そして「復活節第6主日」の後にくる「昇天日」までの16の説教が収められている。気鋭の牧師・司祭の説教を通して味わう『教会暦による説教集』(キリスト新聞社)の新シリーズ第2巻。
アドヴェントからクリスマス、レント、イースター、ペンテコステと、便宜的には1年で一巡りする円で表すことができる教会暦。しかし、本書の編者である荒瀬牧彦(あらせ・まきひこ)さん(日本聖書神学校教授)は、次のように話す。
キリストの出来事はカイロスであって、クロノスの中の一時点にしまい込むことは本質的にはできないのです。したがって教会暦というのは・・・実は、くるくると回りながら上へと登っていく螺旋階段のようなものなのです。(245ページ)
実際本書のどの説教を読んでも、イエス・キリストの死と復活の出来事を聖書の同じ記事から語りながら、今の出来事として受け止めることが出来る。まさに「神の民」は同じ所を回っていないということであり、そこに神様が働いておられるということを実感する。
本書の説教者は、異なるいくつかの教派に属し、第1巻の編者の1人である越川弘英さんを除けば、皆、若手・中堅の牧師だ。この時代にふさわしい言葉と、感性にあふれた「新しい説教」が展開される。そこには、コロナパンデミックの中、イエス・キリストの死を見つめ、復活の意義を問う、気鋭の牧師たちによる渾身の言葉があふれ、教会説教でよく問題になる退屈さなど微塵(みじん)も感じられない。
また、最後の昇天日説教で、日本ではあまり記念されることのない「昇天日」の新しい祝い方について提言しいるのも興味深い。クリスマスにはアドベント、イースターにはレントがあるように、ペンテコステも昇天日から始まる10日間を準備期間とし、とりわけ教会の現実と課題ということに関心を向けたらどうかというものだ。
2006年に『教会暦による説教集』シリーズが出版されてから15年。コロナパンデミックの中で編まれた第2巻は、それぞれの説教にもコロナ禍の影響が反映されている。コロナ禍で社会が大きく変化しつつある中、絶対に変わらない事実である「イエス・キリストは今日も生きておられる」ということ、その希望を手にどのように生き、他者を愛していくか。どの説教からもその答えを見い出すことができるはずだ。
本書に掲載されている説教は次のとおり。
受難節
《灰の水曜日》
「神への全集中」
日本基督教団 高槻日吉台教会 吉岡恵生(よしおか・やすたか)
《受難節第一主日》
「神はレンタル救世主?」
日本基督教団 北千里教会 宮岡真紀子(みやおか・まきこ)
《受難節第二主日》
「分断の壁の向こうから」 日本基督教団 新潟教会 長倉望 (ながくら・のぞむ)
《受難節第三主日》
「自分の十字架を背負って」
日本基督教団 横浜本牧教会 宮川忠大(みやかわ・ただひろ)
《受難節第四主日》
「突然、神の国のドアが開いて」
日本基督教団 吉祥寺教会 友野富美子(ともの・ふみこ)
《受難節第五主日》
「主に仕える者」
日本基督教団 大阪城北教会 山口義人(やまぐち・よしと)
《受難節第六主日 -棕梠の主日-》
「今はあなたたちの時」
日本基督教団 武蔵野扶桑教会 北村裕樹(きたむら・ひろき)
《洗足木曜日》
「食べなさい、飲みなさい」
関西学院大学神学部 橋本祐樹(はしもと・ゆうき)
《受難日》
「神の子は、他人を救ったのに自分を救えない」
カンバーランド長老キリスト教会 さがみ野教会 宮井岳彦(みやい・たけひこ)
復活節
《復活日 -イースター-》
「長すぎた聖金曜日」
日本福音ルーテル教会 関野和寛(せきの・かずひろ)
《復活節第二主日》
「肉もがれる逸脱の息 ― シャローム」
マイノリティ宣教センター 渡邊さゆり(わたなべ・さゆり)
《復活節第三主日》
「今日も生きておられるイエスと共に」
東京フリー・メソジスト教団 南大沢チャペル 飯田岳(いいだ・たかし)
《復活節第四主日》
「神の栄光を見る者に」
保守バプテスト同盟 盛岡聖書バプテスト教会 近藤愛哉(こんどう・よしや)
《復活節第五主日》
「だからまた、互いに愛し合う」
遺愛女子中学校高等学校 百武真由美(ひゃくたけ・まゆみ)
《復活節第六主日》
「キリストの勝利」
日本基督教団 神戸東部教会 古澤啓太(ふるさわ・けいた)
《復活節第七主日 -昇天日-》
「キリストの昇天と教会 ― ペンテコステに備えて」
同志社大学キリスト教文化センター 越川弘英(こしかわ・ひろひで)
『イースターへの旅路 新版・教会暦による説教集』(編者:荒瀬牧彦)
2021年2月10日初版発行
キリスト新聞社
本体1800円+税