【速報】 米中間選挙、牧師・神学生の民主党候補3氏が当選 「隣人愛」掲げキリスト教ナショナリズムに対抗

11月3日に投開票された米中間選挙で、キリスト教信仰を積極的に語り、民主党から連邦議会選挙に立候補した牧師や神学生3人が相次いで当選を確実にした。カンザス州とテキサス州の上院選、アイオワ州の下院選で、それぞれ共和党候補を破った。

カンザス州の上院選では、米合同メソジスト教会(UMC)のアダム・ハミルトン牧師が、共和党現職のロジャー・マーシャル氏を破った。同州で民主党候補が連邦上院選に勝利するのは94年ぶり。

ハミルトン氏は、約2万5千人の信徒を擁する大規模教会「復活教会」の創設牧師。教会と選挙運動を明確に区別しながら、生活費や医療費の負担、政治的分断などの問題を訴えた。共和党が伝統的に強い同州で、穏健派や若年層などの支持も集めた。

テキサス州の上院選では、アメリカ合衆国長老教会(PCUSA)系のオースティン長老派神学校で学んだ民主党のジェームズ・タラリコ州下院議員が、共和党のケン・パクストン州司法長官を破った。民主党が同州の連邦上院選で勝利するのは1988年以来となる。

タラリコ氏は、キリスト教ナショナリズムを批判する一方、聖書の教えに基づく「隣人愛」や「人間の尊厳」を重視する政治を訴えてきた。公立学校の教師を経て政界入りし、教育、医療、貧困、移民などの問題をキリスト教的な倫理と結び付けて論じてきた。

特に、キリスト教ナショナリズムを「キリストの名を借りた権力崇拝」と批判し、キリスト教信仰が他者への愛や弱者への配慮に結び付くべきだと強調。宗教的な言葉を積極的に用いながら、共和党支持者を含む幅広い有権者に支持を呼びかけた。

アイオワ州第3選挙区の下院選では、米国福音ルーテル教会(ELCA)の牧師で民主党のサラ・トローン・ギャリオット州上院議員が、共和党現職のザック・ナン氏を破った。

ギャリオット氏は、病院チャプレンや教会牧師としての経験を持ち、宗教間協力による食料支援などにも携わってきた。選挙戦では家計負担の軽減や医療へのアクセス確保などを訴え、牧師として培った経験を政治活動にも生かしてきた。

今回の選挙では、キリスト教保守派と共和党の結び付きが強調されてきた米国政治において、民主党側からも信仰に根差した政治的メッセージを積極的に発信する候補者が注目された。「レリジョン・ニュース・サービス」(RNS)によると、民主党からは牧師や元牧師、神学生らが多数出馬。共和党の候補者や支持者から、その信仰理解を疑問視する批判も相次いだ。

南山大学教授の山岸敬和氏は、笹川平和財団の論考「キリスト教ナショナリズムと『愛の政治』――タラリコは民主党の未来なのか」(7月7日)で、タラリコ氏の特徴を、キリスト教に由来する倫理的な言葉を民主党の政策を語るための公共的言語として用いる点に見出している。「隣人への愛」「尊厳」「共通善」といった言葉が、宗教的な有権者と世俗的な進歩派をつなぐ役割を果たす可能性を指摘。タラリコ氏の当落を超えて、こうした政治的言語が民主党の政治文化に及ぼす影響に注目している。

今回の結果について、米国政治とキリスト教の関係を研究する木村智氏(ハーバード大学大学院)は、「当選した三候補はいずれもメインライン(主流派)と呼ばれる米国プロテスタントのリベラル・中道勢力に属する。メインラインは1960年代ごろまで米国のプロテスタント文化の旗振り役だったが、この半世紀間は会員や教会数の減少に見舞われ、また多様性への配慮から政治空間でキリスト教的メッセージを発することに消極的だった。しかし近年、福音派などの宗教右派による宗教的ボキャブラリーの『乗っ取り』に危機感を感じて、メインライン系の牧師・指導者らが再び公共空間で宗教的言語を使うことに積極的になってきている。今回の中間選挙の結果は、米国におけるリベラル・プロテスタントの伝統の復活を感じさせる。これからの米国政治では『民主党=リベラル=世俗的』という図式はもはや成り立たない」とコメントした。

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