チャプレンへの道 其之3――人の魂に触れるために必要な時間 【関野和寛のチャプレン奮闘記】第34回

人々の魂をケアするプロフェッショナル・チャプレンになるために、米国では、Association for Clinical Pastoral Education(ACPE)が認定する臨床牧会教育(Clinical Pastoral Education:CPE)を4ユニット修了することが一つの基準とされている。

そのためには少なくとも1年間の時が必要である。そして、時だけではなく、膨大な労力と費用がかかる。日本に住んでいた私にとって、それは牧師として働いていた教会を辞め、米国へ移住するために日本の住まいを引き払うという大きな転換であった。なぜそこまでのことが求められるのか。

本質的には、チャプレンになるために必要なことは、所定の単位を取得することでも、1年間で一定の知識や技術を習得することでもない。そうではなく、人の魂をケアするために、自分自身と向き合うことである。自分とは何者なのか。幼少期に家庭や教会、学校で受けた傷、人生で経験した苦しみ。それらは自分の人格形成にどのような影響を与えてきたのか。自分の中に存在する宗教性やスピリチュアリティは、どこから生まれたのか。

CPEでは、こうした問いを時間をかけて問い直していく。そして、そこで気づいた自分自身の弱さや葛藤を、きれい事を抜きにして仲間やスーパーバイザーの前でことばにしていく。表面的な会話では魂の深みに触れることはできない。それは痛みと勇気を伴う営みである。だからこそ、チャプレントレーニングには年単位の時間が必要なのだ。そして、その時間の中で育まれるものが「戸惑い」と「信頼」である。

CPEでは、世代、宗教、文化、言語、価値観の異なる仲間たちと学ぶ。時に衝突し、互いの違いに戸惑いながらも、理解し、支え合う関係を築いていく。そのような仲間と出会い、互いの価値観を真に知るためには、戸惑いが必要となる。

私は人生で初めてイスラム教のイマームと共に働き、友情を深めた。そして、ある時、互いに涙を流すほどの衝突を経験した。そこから深い溝ができ、数か月間、ほとんど会話をしない時間があった。だが、CPEの最後には彼を抱擁し、宗教、文化、ことばを超えて和解することができた。どうして和解できたのかは、不思議と覚えていない。

あれから5年。先日、彼のモスクを訪ねることができた。彼は私をモスクの食堂に招いてくれ、チャイとサモサをお腹いっぱいになるまでごちそうしてくれた。時が必要なのである。他者を知るためには時が必要だ。自身を見つめていくためにも時が必要なのである。

そして、知れば知るほどに、それまで見えなかった他者の顔、自分の姿を見つける。その営みには終わることのない時が必要なのだ。


【CPEプログラムのご案内】

ACPE認定のチャプレントレーニング「CPE」が、日本に向けてハイブリッド形式で開講中。春ユニットは申し込み終了、次期は27年9月からの秋ユニットが開講される。問い合わせは Kazuhiro.Sekino[アットマーク]acpe.edu まで。

CPE of Central California
https://www.cpecentralca.org/home/cpe-units

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