喜ぶ人をバカにしてはいけない【聖書からよもやま話519】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、サムエル記第二の6章です。よろしくどうぞ。

サムエル記第二 6章16節

彼女はダビデ王が主の前で跳ねたり踊ったりしているのを見て、心の中で彼を蔑んだ。

(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

ダビデは「主の箱」と呼ばれる箱(今の日本で言えばお神輿みたいなものです)を自分のところに運んだとき、喜びました。喜んだなんてものではありません。嬉しくて嬉しくて飛んだり跳ねたり踊ったりして、まさに狂喜乱舞しました。それをみたミカルという女性は「あら、なんてはしたない」とそんなダビデをバカにして、後からダビデに「今日はずいぶん上品に振舞われていましたね」と嫌味を言いました。神様はそんなミカルをみて「そういうのは良くないぞ」と思ったのか、生涯彼女には子どもを与えませんでした。

たしかにダビデは見る人が見れば「品がない」と言われるような喜び方をしたのかもしれません。でも人が喜んでいるのをバカにするのはそれ以上に「品がない」ことです。たとえその喜びに共感できなくても、一緒に喜ぶことはできなくても、「わぁ喜んでるな。よっぽど嬉しいんだろうな。よかったねー」くらいの心持ちで暖かく見守るのが良い態度なのかと思います。先日、大相撲九州場所の千秋楽で大関琴櫻が初優勝を決めて、僕はやたら喜んだのですが、それを「相撲なんかで喜ぶなんて」とバカにされたらいい気はしません。「相撲はよくわからないし興味もないけど、よかったね」くらいの気持ちで暖かく見守っていただけるとありがたく思いますし、実際に僕の周りの人たちは「はいはい、またマロが相撲で興奮しているよ」と、(半ば呆れつつかもしれませんが)暖かく見守ってくれるので、幸せだなーと思っております。

ましてダビデは神様の祝福の証である「神の箱」を与えられたのですから、それはもう僕が琴櫻の優勝に喜ぶなんかよりも何十倍も何百倍も嬉しかったことでしょう。それをミカルはバカにして、しかも本人に嫌味まで言ってしまったのでした。ミカルの残念なポイントは2つです。1つは「人の喜びをバカにしてしまったこと」、もう1つは「神様に興味がなかったこと」です。神様の祝福を喜ぶダビデをバカにしたということは、彼女が神様の祝福に興味がなかったという証拠です。僕が琴櫻の優勝を喜ぶのを、琴櫻に興味のある人や相撲に興味のある人は決してバカにしないでしょう。それと同じことです。ミカルは神様に興味がなく、その祝福を受けることにも興味がなかったんです。神様がどっちの視点で彼女を罰したのかはわかりません。もしかしたら2つ合わせて合わせ技一本なのかもしれません。

しかしいずれにせよ、「喜ぶ人と一緒に喜ぶ」姿勢が彼女にあったなら、きっと彼女はもう少し幸せな人生を送ったことでしょう。もちろん特に現代の価値観では「子どもが与えられないこと」が不幸とは限りません。とはいえ、当時の価値観では少なくともそれが「より幸福な」人生の材料になったとは考えられません。つまり彼女は人の喜びをバカにしたせいで、自分の喜びも一つ失ってしまったのでした。もしダビデと一緒に喜べたなら、きっと彼女にもより多くの喜びが与えられたことでしょう。

人の喜びを喜ぶとき、自分にも喜びが与えられるんです。
人の喜びをバカにするのは、自分の喜びを放棄することなんです。
ですからたとえ一緒に喜べなくても、せめて暖かく見守ることが大切なのかと思います。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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