教会のガラス扉に貼られているのは、「注意」と大文字で書かれた黄色い注意書き。「ここ14日間にアジアに渡航した子どもは教会に連れてこないように」と保護者に注意を促すものだ。
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中国語、広東語、英語の礼拝を行う単立のラレー中華キリスト教会(RCCC)のような教会は、米国疾病予防管理センター(CDC)の指針に従い、礼拝を休止している。
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多くの人たちは、さらなる予防措置を取っている。たとえば、スモール・グループでの集会や礼拝後の食事会、そのほか人の集まるイベントなどの中止だ。
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「用心しています」とRCCCのジェリー・ミラー青年担当牧師は言う。「当然、恐れも少しあるのかもしれません」
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中国の武漢で始まったウイルスの感染拡大により、10万人を超える人が病気になり、9日の時点で3700人以上の死者が出た。米国内の新型コロナ・ウイルスの感染者は500人を超え、死者は22人に上る(8日現在)。
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その中で病気の恐怖の矢面に立たされているのは中国系米国人コミュニティーであり、広範囲な安全対策を講じてきたのもまた彼らだ。
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このウイルスによって、1月25日からの春節(旧正月)の祭りが妨げられた。春節には、何千、何万人もの人が中国へ渡航し、家族と再会を祝う。
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米国内では、パーティーや集会、ほかの祝会もほとんどが中止となった。
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1月下旬から、米国内の中国系教会では出席率が50%も下がっている。
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「皆、同じような影響を受けています」と語るのは、バージニア州リッチモンドにあるグレース中華バプテスト教会のカーター・タン英語ミニストリー担当牧師。
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南部バプテスト連盟の教会で働くタン牧師によると、米国内の中国系教会には、武漢にいる家族や友人を亡くして悲しむ多くの教会員がいるという。武漢は中国の中央に位置し、1100万人が暮らす大都市だ。
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「私たちの教会には、先週、新型コロナ・ウイルスで父親を亡くしたばかりの女性がいます」とタン牧師。これは中国にいる人だけの問題ではないと言う。「個人個人の家庭にも打撃を与えています」
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デルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空といった主要航空会社は1月31日、中国本土への渡航を中止した。それによって中国系米国人は誰一人、仕事や学校、愛する者の葬儀のためにも中国へ行くことができなくなってしまった。また、飛行機での渡航が禁止される前に訪米していた中国人も帰宅できなくなった。感染拡大が始まる前に訪中していた米国人も同じだ。
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中国系米国人は、大半がクリスチャンではない。52%は、これといった宗教を持たない。しかしピュー研究所の調査によれば、31%は自らをクリスチャンと言い、15%は仏教徒だ。
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中国系米国人のクリスチャンのほとんどがプロテスタントで福音派だ。教派は単立かパプテストが多い。
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「南部バプテスト連盟系の中国系教会は200から250あります」と語るのはアモス・リー氏。米国・カナダの中国系バプテスト・フェローシップ事務局長を務めている。ほとんどが100人ほどの小さな教会だが、サンフランシスコやロサンゼルス、ダラスといった大都市では大きな教会もあるという。
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「南部バプテスト中華教会では聖餐式の際、感染を防ぐために、パンとぶどうジュースをあらかじめカップにセットして個包装されたもの(コーヒーフレッシュのような容器にジュースが入り、フタの部分に薄いパンが入ったもの)を使用するよう指示が出ています」とリー氏。
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リー氏によれば、2003年のSARS(サーズ)が世界規模で感染拡大した時から多くの教会では、あらかじめカップにセットされたもので聖餐式を行っていたという。
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ラレーにある中華バプテスト教会(CBC)では、「マスクの入ったバスケットを玄関に置いていますが、利用する人は少ない」とジェーン・パン牧師。
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「初めはマスクをしていた人も何人かいましたが、今はいません」
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ノースカロライナ州立大学から数ブロックのところにある教会は先月、中国人留学生との交流会を中止した。この集会に来る予定だった40人の学生は、沈静化すればまた集まることができるかもしれないが、まだ何も決定していない。
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同じように、教会は礼拝後の昼食会も中止した。
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シャーロット中華バプテスト教会では、日曜の昼食の提供方法を変更した。ビュッフェ・スタイルで人が並ぶのではなく、食事を盛りつけた皿をあらかじめ準備することにしたのだ。配膳係は、マスクと手袋を着用して教会員にその皿を手渡す。
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「私たちの教会は警戒しています」と教会員リーダーのケビン・ウー氏は言う。「この教会だけではなく、中国系コミュニティーのすべてがです」
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米国内のみならず、世界中の中華料理店や食材店で売り上げが激減していると報告されている。
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米国内の中国系教会や非営利団体は、武漢の人々のために献金を集め始めた。カロライナ州全域の中国系米国人が、マスクを何箱も送るために献金している。
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ほかの団体も援助を申し出ている。たとえばサマリタンズ・パースは、医療用品や個人用保護具などをパレット78個分も米国務省を通じて献品した。これは、ノースカロライナ州を中心とした伝道活動の広報担当、ケイトリン・ラアム氏の報告による。
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ワールド・ビジョンは、ウイルスの影響を受けた地域に住む5万人分のマスクを提供した。
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「ニューヨーク・タイムズ」の報告では、キリスト教系団体から送られたもののいくつかは受け取られていないという。地方の役人たちは、「中央政府が違法な組織だと考える団体とのつながりが問題になるのではないか」と恐れているからだ。中国政府は五つの宗教を認めてはいるものの、それは同時に国家の認可を受けた団体であることを意味している。
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ラレー中華キリスト教会に出席するキャシー・キンボール氏は、「困難な中でも、教会員は孤立していません」と言う。中国系米国人は、中国語でメッセージが送れる「ウィーチャット」というアプリなど、ソーシャル・メディアを通じて中国の家族や友人と連絡を取ることができる。
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「このトピックの議論にはみんなが参加します」とキンボール氏。2003年から米国に在住して永住権を持つ56歳で、中国語のローカル・ニュースサイト「一人じゃない」を運営している。
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普通の日々に戻れるのがいつになるのかは分からない。
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「何を期待すべきか、不透明なことが多い」とリー氏。「全体像がまだ見えません。だからこそ、皆が気をつけているのです」
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執筆:ヨナット・シムロン
本記事は「クリスチャニティー・トゥデイ」(米国)より翻訳、転載しました。翻訳にあたって、多少の省略をしています。クリスチャンプレス編集部で感染者の数字などを更新しています。
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