【特集】東京基督教大学学長・山口陽一さん 時代に適応しながら、変わらない聖書信仰を

 

福音派の諸教会を背景とする日本で唯一の4年制神学大学、東京基督教大学(千葉県印西市、以下TCU)の山口陽一学長に話を聞いた。

山口陽一学長

──TCUは神学大学や神学校とは違うのでしょうか。

TCUは入学者をクリスチャンに限っていますが、信徒献身者と牧師の養成という両方を持っているところが他の神学大学や神学校と違います。神学校的要素と大学の要素の両方を持っているので、一般大学との交流もあり、福音派と主流派の神学校との交流もあります。

──学生はどんな違いがありますか。

TCUでは、受洗して、教会に属し、キリストへの献身を表明する人を迎えています。ほかの神学校と比較すると、若い献身者がたくさん集まっているのが特徴です。信徒として献身する若い人も多く、そういう意味では裾野が広いといえます。卒業後も、教会や伝道団体だけでなく、福祉施設、一般企業、NGO、教育機関など、それぞれの場所に遣わされていきます。

──キリスト教福祉学専攻があります。

優秀な学生が多く、就職率も抜群です。クリスチャンの働き人を求める福祉関係の事業所はたくさんあります。TCUは、そういった福祉施設などとのつながりを大切にしています。

またユース・ミニストリー副専攻(学部共通)では、若い人と教会の間に立てるような人材を養成し、hi-b.a.(高校生聖書伝道協会)などにスタッフを送り出しています。これも、ほかの神学校では直接的にはしていないことです。

──留学生が多く、国際色豊かという印象があります。

全学生の4分の1が留学生で、留学生も日本の学生と同じ寮に暮らすので、国内留学のような環境が日本の学生たちにはあると思います。インド、インドネシア、カナダ、韓国、ザンビア、ジンバブエ、中国、ネパール、ブルガリア、米国などからの学生や、海外からの帰国者、在日外国人教会からの学生も増えています。

──時代の流れの中で教育には何か変化はありますか。

アクティブ・ラーニング、コミュニケーション能力の強化、ITのスキルなど、取り入れるべきものはしっかり取り入れています。礼拝でも、オーソドックスな賛美歌だけでなく、プレイズ・ワーシップなども賛美します。説教スタイルも、今の時代に適応したやり方で若い世代に伝えていくことを考えています。

このように時代の要請に応えながらも、「聖書は誤りない神の言葉」という福音派の伝統を頑固に守っていきます。「ただ守るだけ」というのは簡単なことですが、「適応しながら変えないものを守っていく」というのがTCUの考えです。

──クリスチャンばかりの寮生活から一般社会に出ていくわけですが、学生たちに不安はないでしょうか。

学生も教職員も全員クリスチャンという環境から離れることは確かに緊張することでしょう。しかし、濃密な寮生活の訓練はそのための備えです。また、教会とのつながりは卒業後も変わらないので、大きな力になっています。加えてTCUは、卒業生の生涯を応援していきたいと思っています。

──これからTCUが目指すところを教えてください。

TCUでは今、「Stand in the Gap──破れ口にキリストの平和を」をコンセプトに大学改革を進めているところです。信仰における「神」との破れ口(Gap)、「自分」や「人」との破れ口、この「世界」の破れ口。あらゆる「破れ口」に和解の福音によって立ちたもうのがキリストです。キリストと共に破れ口に立つ神の国の働き人を世界に送り出したいと思っています。

──最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

今秋からTCU創立30周年記念事業が始まります。TCUの教職員97人(専任44人)と学生200人は、神の賜物の結集による「宝」です。ぜひ、「破れ口にキリストの平和をもたらす人」となっていきましょう。

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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