宗教メディアサミット 専門紙一堂に会し役割を再確認 仏教タイムス×中外日報×文化時報×キリスト新聞

登壇した(写真左から)工藤、佐藤、小野木、丹羽、西出の各氏

昨年来、統一協会問題に端を発し、宗教をめぐりさまざまな問題が世間の耳目を集める中、長らく宗教を取材対象としてきた専門紙の記者が一堂に会する「宗教メディアサミット」(キリスト新聞社主催)が3月17日、都内で開かれた。

特定の宗派・教団によらない客観的な立ち位置から今日の宗教教団、日本社会が抱える課題について論じ合うことで、宗教リテラシーの向上とカルト被害の予防にも資することを目的に企画されたもの。牧師や僧侶など、教団の代表者が表舞台で発言する機会は少なくないが、その裏で地道な報道に徹するメディアの当事者が企業、宗教の枠を越えて集まるのは初の試み。

共同通信で30年以上にわたり宗教取材を続けてきた西出勇志氏(共同通信編集委員)=写真右端=が調整役として奔走し、工藤信人(仏教タイムス編集長)、佐藤慎太郎(中外日報社東京支社支社長代理)、小野木康雄(文化時報社社長兼主筆)の3氏に加え、宗教情報リサーチセンター(RIRC)から研究員の丹羽宣子氏が登壇。司会は本紙編集長の松谷信司が務めた。

会の模様はオンラインでも生配信され、来場者や視聴者との質疑も交えながら、仏教系カルトの現状、オウム事件の教訓、宗教メディアの役割などをめぐり議論を深めた。

〝検証できるために記録の蓄積を〟
横断的に閲覧できるサービスの提案も

主に仏教を取材対象とする3紙だが、それぞれに創刊の経緯やこれまでの変遷、紙面の傾向が微妙に異なる。まずはそれぞれがお互いをどのように評価しつつ、差別化を図っているかについて意見を交わした。

創刊当初は広島に拠点があった「仏教タイムス」は、原爆投下と深い関わりがあり、社会との接点に重点を置きながら時事問題も扱う。4紙の中では最も古い120年の歴史を持つ「中外日報」は、宗派・教団の政治(宗政)により注力しており、宗教専門紙として広く仏教以外の新宗教なども扱っているのが特徴。一方、創刊100周年を迎え、今年2月に「報道写真展」を開催したばかりの「文化時報」は、あえて業界紙とは一線を画する。近年は「困難を抱えた人に寄り添うことを目指す考え方や活動」を新しい社会と仏教の関わり方として提唱し、ウェブメディア「福祉仏教 for believe」を開設して精力的に発信を続けている。

産経新聞記者を経て社長に就任した小野木氏は、「内向きのニュースだけを追うことに甘んじ、『こころの時代』にふさわしい情報提供が十分にできてこなかった」との反省から、社会と宗教界に向けて多彩な角度から情報を発信し、宗教について考えるヒントを提供する「専門紙」へ脱却することを掲げた。

コメンテーターとして登壇した西出氏は『月刊ジャーナリズム』(朝日新聞社)2022年12月号に寄稿した「『類似宗教』観からの脱却を――メディアにこそ必要なリテラシー」の中で、新宗教への対応が「叩く」か「隠す」かに偏っていたことから、「一般メディアにこそ宗教リテラシーが必要。その意義と問題点の双方を真摯に伝えていくべき」と提言する。昨今の宗教報道をめぐっては、「(カルト的な傾向について)批判すべき点はあるが、同時に宗教の果たす役割や意義も考える契機にすべき」と述べた。

これを受けて工藤氏は、2005年に『メディアの権力性』(岩波書店)で「宗教ジャーナリズム」の不在を批判した藤田庄市氏(写真家、ジャーナリスト)の指摘を引用しつつ、宗教を扱うメディアには「叩く」「隠す」だけでなく「おもねる」という要素も含まれると紹介した。

統一協会問題をはじめ、新宗教をめぐる問題について、仏教界では公式に見解を表明するなど、目立った動きが報じられていない。「中外日報」が昨年11月に行ったアンケートにも、「情報収集中」との回答が大半だったという。

1998年に設立された公益財団法人のRIRCは、宗教専門紙を含め、各一般紙で報じられた関連ニュースを網羅的に抽出し、『ラーク便り』として定期的に発刊している。特に全国紙では見過ごされがちな地方紙の記事にも目を配り、記録として掲載している点は意義が大きい。

丹羽氏は専門紙の役割について、「宗教はエモーショナルな感情や多様な反応を呼び起こすもので、発信する側は身構えてしまう面もあるが、後から振り返って検証できるように、できる限り中立的・客観的な記録を蓄積し続けることが重要」と指摘した。

購読者の高齢化など、宗教メディアの存続をめぐる課題について佐藤氏は、「先代住職が亡くなったから購読をやめるという事例が多い。新規読者の獲得も難しい。家族が亡くなったのを機に檀家を抜けるという傾向と同じ」と吐露。デジタル化への対応など、各紙の工夫も共有した。

宗教界の自浄作用を問う質問に西出氏は、「今回も自身の問題として捉えられるかが肝心。オウム真理教をめぐっても、宗教界は反応したものの深く捉えられたとは言い難い。RIRCも宗教者ではなく、宗教研究者の反省によってできた。メディアが果たすべき役割は大きい」と応じた。

また、会場からの質問に答えるかたちで宗教専門メディアを横断的に閲覧できるサービス(定額制のサブスクリプションなど)を、公的な援助も受けながら企業・媒体の枠を越えて企画・開発できないかとの提案もなされた。

専門紙としては他にも、「神社新報」「天理時報」「新宗教新聞」「カトリック新聞」「クリスチャン新聞」など、また雑誌として発行されている『月刊住職』『宗教問題』などがある中、今回は教派横断的な新聞媒体に限られた。一方、創価学会、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)関係者も参加し、関心を寄せていた。

参加した関係者の間でも、類似の前例はなかったことから、今回が初の画期的な催しであったことが確認され、第2回以降の可能性についても前向きに語られた。

会のダイジェストは下記YouTubeからも視聴できる。

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