【信教の自由を守る日】 櫻井義秀氏「統一教会問題と日本の保守政党」テーマに講演

「第46回紀元節復活反対2・11道民集会」(靖国神社国営化阻止道民連絡会議主催)が2月11日、ホテルライフォート札幌(札幌市中央区)を会場に、対面とオンラインによるハイブリットで開催された。延べ200人が参加した。

同集会は1966年に「紀元節」にあたる2月11日を「建国記念の日」と制定したことに危機感をおぼえ、国民の主権を守るため69年から開かれてきた。3年ぶりの対面開催となった今回は、宗教社会学者の櫻井義秀(さくらい・よしひで)氏(北海道大学教授)が、「統一教会問題と日本の保守政党ーー日本・伝統・家父長制にすがりつく名ばかりの保守」と題して講演した。昨年7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件によって大きくクローズアップされた統一協会問題に焦点を当て、日本の政治の動きに宗教がどのように関わっているかをめぐり1時間半にわたって語った。

櫻井義秀氏

前半ではまず、統一協会の歴史簡単に振り返り、①性と合同結婚式の宗教、②韓国のために資金調達活動に特化した宗教、③植民地支配に対する恨(ハン)の3点からこの団体の基本的な特徴について説明。続いて、なぜこの教団が政治に関わり続けるのか、その根本的な理由と背景についてコメントした。そのうえで、今後、統一協会が宗教法人として解散されるとしても、任意の宗教団体として残る世界平和統一家庭連合、各種関連団体と日本社会がどのように付き合っていくかという課題が残されたままであると指摘した。

1950年代にキリスト教系の新宗教として日本に入ってきた統一協会は、新宗教・宗教を偽装した経済組織・宗教右派の三つの顔で、日本社会で活動を広げてきた。現在、日本には6〜8万人の信者がいるとされるが、信者でさえその全体像を知らないという。そのため、今後、解散命令の請求がとおり、世界平和統一家庭連合がなくなったとしても、信者は女性連合などの別組織に移るだけで、オウム真理教のように公安警察が監視できるような法律はないため、勧誘活動は続くだろうと予想される。

櫻井氏は、「そのような中で我々ができることは、統一協会を批判し続けることだ」と述べ、次のように続けた。

その批判に対して「そんなことはない」と反論してきたら、討論をすればいい。討論・批判ということは、日本の宗教団体に関しては非常に少ない。それは訴えられる可能性があるからです。大学でカルト問題の講演をする場合も、具体的な名前は出さないでほしいと言われます。この半年間、メディアはあれだけ騒ぎ、世論としても統一協会は問題があると認識しているにもかかわらず、クレームが怖い。反論に対する反論ができないからです。カルトを名乗って勧誘してくるところはありません。だから、学生には具体的な名前を教えなければいけない。それを削除したら注意のしようがないわけで、クレームをつけられてもよしとするしかないと思っています。

後半では、自民党と統一協会との関係を明らかにした。統一協会のフロント団体である国際勝共連合は、戦後日本における政教関係の「ステルス(隠密)型 」に当たる。国際勝共連合は、東西冷戦時代に反共主義を掲げて結成され、反共という共通の目的で自民党とのつながりを深めた。ベルリンの壁崩壊後は、教育基本法の改正や、LGBTQに関する条例法案などで自民党の「御用聞き」としてその関係を築いてきた。さらに、国際勝共連合から派生した団体と関係を持ち、さまざまな選挙的な支援を受けながら、関係を持ち続けてきたのではないかと指摘する。

櫻井氏は日本が抱える問題として、「宗教化する政治・政策への欠如」を挙げ、岸田内閣が打ち出す「異次元の少子化対策」など、言葉のレトリックで国民に幻想を抱かせ、社会を劇的に変えようとする政府のやり方に疑問を投げかけた。「リアルな認識で現実的に考えることをしなければ、家庭の教育力の低下を根拠とする家庭教育支援法案のような、社会の現実にまったくそぐわない法律が、統一協会の後押しで成立する恐れがある」

櫻井氏は2010年、『統一教会ーー日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会)を出版。当時、社会化する教団への対処として、学者、宗教者、法曹界、マスメディア、行政、教育、それぞれの分野に向けて呼びかけたが、10年が過ぎても動きは見られないという。特に、宗教をタブー化し続け、問題の所在を明らかにしてこなかったマスメディアや、宗教法人の公益性を真剣に論議せず、事件が起こるまで何もしなかった行政は、その責任を重く受け止めるべきだろう。

講演の最後にはこう結んだ。

旧統一協会問題は、抜本的に何か法律を作って、政治的なやり方で解決することはできません。だからこそ、一般の人たち一人ひとりが、こういう団体があるということを知り、どうしたらアプローチを逃れることができるか、あるいは巻き込まれる人たちをどうすれば救えるのかを考え、少しずつ改善していくしかない。そのためには、知識、思考力、判断力を備えることが大切で、その力が問題を解決に導いていくと思うのです。

 






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