【塀の中からハレルヤ!】(2) 薬物に手を染めた過去と対峙するとき 安藤康雄さん(仮名)

覚せい剤のニュースといえば芸能界と思いがちだが、覚せい剤に溺れ、そこからなかなか抜け出せない人々は、芸能界以外にも多くいる。

安藤 康雄さん(41)もその一人だ。小学校、中学校を通して、自身のことを「不良少年だった」と表現する。万引き、傷害、窃盗などを繰り返し、少年鑑別所に入ったこともあった。安藤さんの両親は幼い時に離婚。父親の記憶はほとんどない。

勉強はあまり好きではなかった。中学校に上がるころには、授業には完全についていけないことを自覚していた。近所の大人からは、「あの子とは遊ぶな」と陰で言われるほど、素行が悪かった。

「両親が離婚しているという負い目をどこか感じていたのだと思う。友達もいなくて、寂しかった」と当時を振り返る。

中学を卒業すると、タイル工の仕事に就いた。地元では暴走族に入り、相変わらず悪さをしていたという。17歳から暴走族の先輩に勧められ、覚せい剤に手を出した。最初は遊びの一環だった。罪悪感は全くなかったという。「いたずらして、たばこを未成年が吸うのと同じ感覚」と安藤さんは話す。

26歳の時、薬物取締法違反の罪で、一度目の逮捕。執行猶予4年懲役1年6か月の判決がくだった。27歳で結婚、2人の子どもを授かったが30歳で離婚。時を同じくして、2度目の逮捕。今度は実刑がくだった。

刑務所での生活は、朝4時半から夕方6時までの刑務をただひたすらこなしていた。31歳で出所後は、「二度と薬物はやるまい」と思い、3か月は我慢することができた。しかし、出所後の生活は甘くはなかった。

経済的にも追い込まれ、再び薬に手を出してしまい、薬物中毒に。街中で挙動不審だったところを職務質問され、3度目の逮捕。再び服役することになった。

覚せい剤の闇は安藤さんをつかんで離さず、出所後、再び闇の世界へ。アスベスト工事の会社の役員をしていたが、薬物に手を出してしまったのだ。

疎遠にしていたが、最愛の弟が昨年,急逝。そのことがきっかけとなり、悲しみから逃れようと拍車をかけて、薬物を使用するようになっていた。そして、今年2月、4度目の逮捕となった。

裁判を前に進藤牧師と安藤さん

留置所の中で、後輩から紹介されたのが、今回、弁護にあたった平塚雄三弁護士だった。知人を通して進藤牧師を知ったというクリスチャンの平塚弁護士は、すぐに連絡をとり、安藤さんと進藤牧師は対面することとなった。

「実は、以前からYouTubeなどで進藤先生のことは見ていた。会ってみたいと思った」と、その時の心境を話している。薬物をやめたくてもやめられず、もがいていたところに一筋の光がさしたようだった。

「助けてください」と涙を流しながら話す安藤さんに、「本気じゃないとやめられない。でも、私にもできたのだから、あなたにもできる」と進藤牧師は話したという。

それから、進藤牧師との聖書を通して、本当のやり直しが始まった。今は、全く覚せい剤のことを考えることはなくなったという。

「犯罪に手を染めた過去は変えることができない。しかし、自分はイエス様とともに生きていくことを決めた。伴走してくれる先生や教会の仲間がいることは、本当に心強い。裁判の結果はわからないが、どんな結果であっても、今度こそやりなおす」と力強く語った。

法廷で情状証人に立った進藤牧師は、「私も彼と同じような過去がある。しかし、神と出会い、多くの人に信じててもらって、ここまできた。信じてくれる誰かがいれば、人は必ず立ち直れると私は信じている。彼にもできる。私は彼を信じたい」と語っている。

安藤さんは、「だれの罪でも、あなたが赦(ゆる)せば、その罪は赦される。誰の罪でもあなたが赦さなければ、赦されないままのこる」(ヨハネ20:23)を好きな聖句として紹介してくれた。

最終判決は、10月になる見通し。

※本記事は一部構成を加えています

【塀の中からハレルヤ!】(1) 再犯からのやり直し カズさん(32歳)

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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