「顔は見たくないけど好き」なんてことはありません【聖書からよもやま話611】

主の御名をあがめます。
皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。

本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は旧約聖書、詩篇の86篇です。よろしくどうぞ。

詩篇 86篇16節

御顔を私に向け 私をあわれんでください。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

ダビデの祈りの詩です。ダビデは神様に「私に顔を向けて、あわれんでください」と祈っています。「あわれむ」と言うと、現代の日本の感覚だともしかすると「上から見下ろすような視点で優しい言葉をかける」ようなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでダビデが求めている「あわれみ」とはそういうものではありません。「慈悲を求める」というのが近いかと思います。まぁ、簡単に言ってしまえば「優しくしてください」ということです。

人に優しくするとき、顔を背ける人はいません。顔を背けながら優しい言葉をかけたり、手を差し伸べたりする人はいません。そんなことをされても受ける側は「優しくされた」とはなかなか思えません。顔を向け合うというのは優しさの大前提です。そして神様は人間に対して、顔を向け合ってくださる方です。

愛や優しさを言葉で叫ぶのは簡単です。「愛の活動!」とか「人に優しい政治!」と言葉で主張するのは簡単です。でもそんな言葉が本当に愛や優しさから出ているのか見分けるのは、それを叫ぶ人に、その愛や優しさの対象一人ひとりの顔が見えているかどうかです。顔も知らずに叫ぶ「愛」や「優しさ」がネット社会と相まって、増えているように思います。

もちろん、これを書いている僕には、これを読んでくださっている人の顔は見えません。でも読む人の顔を想像はしています。それは芝居を作っていた時も音楽を作っていた時も同じことです。顔を想像することなしに、人に対して責任を持った表現というのはできないものです。そして、できることなら今でも読者の方と顔を見合って話したいと思っています。

ネット社会というのは、お互いに顔を見ないのが前提のコミュニケーションが簡単にできてしまいます。そこで愛や優しい言葉を交わし合うのも簡単です。しかし、顔を見るのだ、という意思なしに本当に愛や優しさに満ちたコミュニケーションができるでしょうか。

僕にもネット上で知り合って、まだ顔を見合ったことのない友人がいます。でもいつか必ず会いたいと思っていますし、必ず会おうねと言い合っています。なんなら会った時に行く店の話まで具体的にしたりもしています。だからこそ僕は彼のことを、まだ会ったことがないとはいえ、友人だと呼べるのです。もしいつか会う前提や、少なくとも「会いたい」という意思がなければ、友人とは呼べません。

神様も同じです。「神様を信じている」と言いながらも、いつか神様と会うのだ会いたいのだという意思や確信がないのであれば、それは信じているとは言えません。誰だって、好きな人の顔は見たいものです。顔は見たくないけど好きだ、なんてことはないはずです。神様も同じです。神様を信じて愛しているなら顔が見たいはずです。そして神様の方も、僕たちの顔を見たいと思ってくれていますし、僕たちに神様は見えなくても、神様に僕たちは見えていますから、僕たち一人ひとりの顔を見て、覚えて、慈しんでくださっているんです。そして「いつか会おうね」と言ってくださっているんです。

それではまた次回。
主にありて。

MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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