1920、30年代、中国教会の神学的立場と霊的伝統 袁浩 【この世界の片隅から】

18世紀末以来、欧米のプロテスタント教会は世界的な宣教運動を展開し、19世紀は歴史家の間で「宣教の大世紀」と呼ばれている。こうした伝道熱のさなか、欧米から中国に渡った最初のプロテスタント宣教師として、1807年にイギリスのロンドン宣教会よりロバート・モリソンが清の広州に派遣された。その後の100年間、中国は外国との戦争や農民反乱などの危機を経験したが、このような困難な環境の下、欧米の宣教師と中国のキリスト者たちによる絶え間ない働きにより、1920代から30年代にかけて、中国教会は「教会の自立」という新たな歴史的段階に入り、伝道・教会建設・神学教育において、ますます重要な役割を果たすようになっていた。

歴史家ダニエル・ベイズは、中国における自立教会の台頭を、二つに分類している。第一に、中国の土着教派の形成である。代表例として、魏保羅(ぎ・ぱうろ)とその息子・魏以撒(ぎ・ いさく)が北京で創立した「真耶穌教会」、倪柝声(げい・たくせい、ウォッチマン・ニー)が福建省で創立した「小群」、敬奠瀛(けい・てんえい)が山東省で創立した「耶穌家庭」、山東省全域に広く創立された「霊恩会」などが挙げられる。第二に、独自に宣教活動を始めた中国出身の独立伝道者たちの台頭である。代表例として、余慈度(よ・じど)、王明道(おう・めいどう)、許志文(きょ・しぶん)、宋尚節(そう・しょうせつ)、陳崇桂(ちん・すうけい)などが挙げられる。

自立教会の代表的な独立伝道者・王明道(1900~1991年)

こうした中国の自立教会の神学的・霊的伝統は、保守的な欧米宣教師が中国にもたらした原理主義的神学を踏襲していたといわれるが、世界的なペンテコステ運動が中国教会にも波及したことで、自立教会の原理主義的神学にペンテコステ主義の霊的伝統が流入していた点を、教会や学者が見落としてきた。1920年代の上海リバイバルや山東リバイバル、そして許志文や宋尚節が率いた中国全土のリバイバル運動は、まさに原理主義とペンテコステ主義の融合が表れている。こうした神学的基盤は、1949年以降の中国教会の神学的基盤に大きな影響を与えた。

1920年代から30年代にかけての中国キリスト教の状況においては、自立教会に加えて、外国宣教団体との協力体制が、中国の教会・諸機関・宣教団体・教派に明白な影響を与え続けていた。外国宣教団体との協力体制下にあった中国教会の神学的・霊的伝統は多元的であり、原理主義や自由主義など、さまざまな神学的背景を包含していたが、中国が直面していた国家的・民族的危機と覚醒したナショナリズムは、このような広範な神学を結集させる上で絆の役割を果たした。こうした多様な神学的背景の結集は、中華全国基督教協進会(1922年)と中国基督教会(1927年)の設立に反映されている。

1927年、上海で開催された中華基督教会の第一回全国大会

もちろん、こうした「中国自立教会」や「外国宣教団体の協力体制」という概念だけでは、中国キリスト教の神学的傾向やその信仰実践を十分に説明することはできない。個人的再生の体験や個人的救いの強調する原理主義やペンテコステ主義とは対照的に、社会的福音を重視する自由主義神学は、中国の人々、特に知識人の間で広く受け入れられ、支持されていた。社会改良を重視していたYMCAは、中国における自由主義神学の典型的代表例といえるが、彼らはナショナリズムの高まりと国家的危機のただ中にあった中国において社会改革を実行し、地上に神の国を実現しようとした。YMCAに代表される自由主義神学は、革命によって中国を救おうとする共産主義と多くの共通点・親和性を持っており、これが1949年以降、中国共産党の支援のもと、YMCAの多くのメンバーが三自愛国運動に参加し、指導する思想的根拠となった。

1930年代後半から40年代にかけての相次ぐ戦争(日中戦争、太平洋戦争、国民党と共産党の内戦)は中国教会に大きな試練をもたらし、こうした時代環境の変化によって、中国教会も多くの変化を余儀なくされた。しかし、教会組織や神学的・霊的伝統の観点から見ても、中国教会の基本型は1920年代から30年代にすでにほぼ形成されており、この基本型は1949年の共産主義体制の成立後も中国教会に影響を与え続けている。

(原文:中国語、翻訳=松谷曄介)

袁浩
ユエン・ハオ
 1980年生まれ、中国山東省出身。北京大学で修士号、香港中文大学で博士号(Ph.D.)を取得。現在、カナダ・バンクーバーのバプテスト福音教会の伝道師、トリニティ・ウエスタン大学に設けられているACTS(Associated Canadian Theological Schools)の中国語部の客員教授。専門は中国キリスト教史。

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