【特集】正教会の信仰を学ぶには▼この三冊!(ゲオルギイ松島雄一)【本のひろば.com】

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評者: ゲオルギイ松島雄一

アレクサンドル・シュメーマン「世のいのちのために」(新教出版社)


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『世のいのちのために
正教会のサクラメントと信仰』

・アレクサンドル・シュメーマン:著
・松島雄一:訳
・新教出版社
・2003年刊
・B6判 227頁
・2,420 円

待ちに待った朗報である。二〇〇三年に新教出版社から翻訳(訳者本稿筆者)、出版され、広く我が国のキリスト教界で新鮮な感動を以て読み継がれた「世のいのちのために(For the Life of the World)」がこの春、再版された。著者は、キリスト教の奉神礼(Liturgy)の神髄を語る神学者として、教派を越えて受け入れられてきた故アレクサンドル・シュメーマン神父(アメリカ正教会)。本書は一九六三年全米キリスト教学生連盟の四年に一度の大会で「学びの手引き」として執筆された。体系的な神学論文ではなく「キリスト教の世界観の輪郭、正教会の奉神礼体験が明らかにする世界と人生への見方を示そうと試みたものにすぎない」(まえがき)。しかしその後、米国内はもとより、イギリスでも出版され、さらにフランス語、イタリア語、ギリシャ語に翻訳され、ソビエト政権下での地下出版の一つとしてロシア語にも翻訳された。
私がこの書を初めて手にしたのは、…..(つづく)

ティモシー・ウェア「正教会入門」(二〇一七年 新教出版社)


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『正教会入門 東方キリスト教の歴史・信仰・礼拝』
・ティモシー・ウェア:著
・松島雄一:監訳
・新教出版社
・2017年刊
・A5判 400頁
・4,400円

大変喜ばしく、かつ残念なのが本書である。もっか絶版である。しかし、正教会について何か確実な知識が必要になったとき、最初に参照すべき書としてぜひ広く知っていただきたく、紹介した。また本書の翻訳には監訳した私を始め三人の正教会司祭、四人の信徒が協力した。著者はオックスフォード大学で長く正教を研究する碩学であると同時に、正教会の主教でもある。内容は広く正教会の歴史、信仰、奉神礼、霊性の各分野に及ぶ。原著は “The Orthodox Church” 1963年初版。世界中の正教に関心を持つ人々に読み継がれた定番図書である。再版が待たれる。

 

「キエフ洞窟修道院聖者列伝」(三浦清美訳、二〇二一年、松籟社)


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『キエフ洞窟修道院聖者列伝』
・三浦清美:訳・解説
・松籟社
・2021年刊
・四六判 448ページ
・4,400円

ルーシ(ロシア、ウクライナの古名)の時代、十一世紀なかばにキエフのドニエプル河畔に創設された洞窟修道院で祈りと斎(断食)の日々を送った修道士たちと、彼らを取り巻く人々の伝承集。十一世紀末から十三世紀始めにかけてまとめられた。文字通り「キリストに倣って」聖書を生きた人々の姿が活写されている。
前半は洞窟修道院を創設したアントーニイとその弟子フェオドーシイのエピソードである。隠修者アントーニイのもとに修道を志す人々が次々と集まり、「地上の天使、天上の人間」と称えられたフェオドーシイが修道院の基礎を整えていった。フェオドーシイは主イエスの「わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負いわたしに学びなさい(マタイ11:29)」という言葉通り、常に自分を低くし、「仕える者」として弟子たちに心を配った。重労働を率先して行い、パンを焼き、水が足りないと聞けば、即座に水くみに行き、薪が足りなければ斧を手に薪割りを始めた。のんびり食事をしていた修道士たちは修道院長の働く姿を見て…..(つづく)

 

ゲオルギイ松島雄一

ゲオルギイ・まつしま・ゆういち:日本正教会大阪ハリストス正教会管轄司祭

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