「信仰深い人」ほどハマりがちな罠【聖書からよもやま話557】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。

本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は  旧約聖書、ヨブ記の34章です。よろしくどうぞ。

ヨブ記 34章11節

神は、人の行いに応じて報いをし、
それぞれをその道にしたがって取り扱われる。

(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

罪を犯すことなく災難にあってしまったヨブに、友人エリフは「君は何か悪いことをしたはずだ。そうでなければこんな目に遭うはずがないのだから」と言いました。その中で、「神様は人の行いに応じて報いをするんだから」とも言っています。

日本人の常識では「因果応報」というのは自然なものです。良いことをすれば良い報いが、悪いことをすれば悪い報いが与えられるというのは、日本人の心に染みついています。「バチがあたる」というのは、日本人なら誰もが一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、実はキリスト教にはいわゆる「バチがあたる」という概念はありません。ここでのエリフは「ヨブ、君にはバチが当たったんだよ」というようなことを言っているのですが、これは後に神様から直々に否定されます。

もし、人の行動に応じて神様が行動するとするならば、神様の行動は人間の行動によってコントロールできるということになります。それは聖書の神様の性質ではありません。神様は人間の行動と関係なく、自らの意思で行動します。つまり神様は、人間が良いことをしようと悪いことをしようと、それとは関係なしに自分の行動をなさるということです。

それはちょっと理不尽で残酷なことのようにも思えます。だって悪いことをしても裁かれることがなく、良いことをしても酷い目にあうということですからね。そんなことが許されていいのか、やっぱりキリスト教の神なんて信じるに値しない!酷い神だ!なんて思えてしまうかもしれません。

しかし、もし神様が人間のする悪いことをすべて裁いたとしたら。百発百中の「バチ」を人間に当てたとしたら。おそらく人類は絶滅するでしょう。なぜなら聖書によれば、すべての人間は罪人であるからです。何も悪いことをしたことのない人間なんて誰一人としていません。人間は一人残らず神の前で罪人であり、しかも死刑にあたるような重罪人なんです。

「そんな罪なんて犯してないよ!」と怒る方もいるかもしれません。でも聖書には、「人を殺していなくても『死ねば良いのに』と思っただけで殺したのと同じだよ」とか、「不倫していなくても妻や夫以外の人に対して『一夜を共にしたい』とか『キスしてみたい』とか思っただけでも不倫したのと同じだよ」と書いてありますし、モーセの十戒を厳密に守れる人は一人もいません。ですから、人の行動に応じて神様が粛々と裁きを行うなら、人類は絶滅してしまうんです。

しかし、現実に人類は絶滅せずに今日も生きています。これは神様が自らの意思で、僕たちの行動とは関係なしに、僕たちを守ってくれている、見逃してくれているということです。そう考えれば神様の行動が人間の行動とは関係ないというのは、「残酷」や「理不尽」よりもむしろ「恵み」であり「愛」なのだと言えます。

お賽銭を入れて神様を味方につけよう、とか、善行を積んで神様を味方につけよう、というのは一見「信仰深い」ように見えて、実は神様を過小評価しているんです。神様をコントロールしようとしているんです。これは信仰深くあろうとする人こそ陥りがちな罠です。

それではまた。

主にありて。

MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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