第2回「聖書エッセイコンテスト」授賞式で選評委員が対談 林あまり×清涼院流水「聖書の魅力」語り合う

日本聖書協会(石田学理事長)主催による第2回「聖書エッセイコンテスト」の授賞式が1月27日、日本基督教団銀座教会(東京都中央区)で開催され、前回に引き続き選評委員となった林あまり氏(歌人、演劇評論家)と清涼院流水氏(作家、英訳者)による特別対談「聖書の魅力について考える」も行われた。司会は本紙の松谷信司(キリスト新聞社編集長)。

「聖書エッセイコンテスト」は昨年、聖書を愛読する一般の読者(信者以外を含む)とともに、キリスト教に親しみを覚えられるような新しい作品を発掘しようと「聖書ラノベ新人賞」とのコラボで始まった企画。今回は「だからバイブルが好き」とのテーマで、延べ58作品の応募があった。審査については、林氏、清涼院氏、日本聖書協会、キリスト新聞社の4者がそれぞれ10作品を選び、得票数の多い順に賞を決定した。同時に大賞、準大賞、佳作に加え、「あまり賞」「流水賞」も選出された。

大賞はすずさんの「神様の計画」。中学生のころ乳がんで苦しむ母親を見て「神は助けてくれないのか?」という思いに駆られていた時、母親がエレミヤ書(29章11節)を引用しながら「あなたの成長をずっと近くで見ていたい。……でもね。神様には私たちが想像できないような素晴らしい計画がある。だから、大丈夫」という言葉を残してくれたという。高校3年生のセンター試験1週間前に亡くなった母親。その際、父親から手渡されたノートに、生前母親が記した家族や教会のことについてぎっしりと書き記されていた。その後、無事第一志望に合格、今は医師として日々がん患者の方々をケアしているという実話がつづられている。

林あまり氏は「絵画のように美しく、今も生き生きとお心にあるのでしょう」、清涼院流水氏は「お母様の清らかな想いは、打ちひしがれていた筆者を再生させます」とコメント。

第二部の特別対談で清涼院氏は、端的に「全世界の人の人生を変え続け、研究も進み、でも誰にも分からないことが残っている奥深さこそ魅力ではないか」と述べる一方、「実際の聖書とノンクリスチャンが想像する聖書はイメージがかなり乖離している」と語った。実際に清流院氏も『どろどろの聖書』(朝日新書)を出版した際、「聖書の世界ってこんなに想像と違うのか」というコメントが寄せられたが「そのギャップこそ魅力。綺麗な部分だけで人は救えないし、人間の醜さや人生のどん底を描いてくれるからこそ、それを読んで『こんな自分でもいいんだ』と思える」と述べた。

林あまり氏は哲学を研究する友人に「聖書は誰でも読めるから目を通してみては?」と勧めたところ、「普通に読めるの? 宗教だから奥義や難しいことがたくさん記されていると思っていた」という反応だったことから、「いろいろ知っている方でも、意外と聖書って難しいという思い込みがあるのかも」と述べた。

司会の松谷氏は「教会も聖書も信じている人のためのものというハードルがあると思うし、クリスチャンも〝聖人君子〟でなければというイメージがあるため、余計に誤解が生じる」と補足。林氏は「聖書の分厚さと難しそうという思い込みはやはり影響している。簡単に読めるということは強調したい」と述べ、清流院氏は「海外文学などは聖書の知識がないと分からない部分もあるし、実際、僕も洗礼を受けてから昔読んでた本を手にすると意味が分かったという体験が何度もあった。非信徒を対象にしたガイドブックがもっと必要ではないか」と述べた。

会の終盤では次回の「聖書エッセイコンテスト」についても話題が及び、第3回目の開催へ期待をふくらませつつ幕を降ろした。今後の予定については、今回ノミネートされた全作品とあわせて、同協会公式サイトで掲載される予定。

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