LGBT「当事者」と「非当事者」の境界は? トークライブ「マイノリティをめぐる当事者性とは何か」開催

日本キリスト教団出版局刊の『LGBTとキリスト教 20人のストーリー』の監修者、執筆者を交えたトークライブ「マイノリティをめぐる当事者性とは何か」(キリスト新聞社主催)が7月8日、教文館(東京都千代田区)を会場に対面&オンラインのハイブリッドで開催された。

同書の重版出来を記念して企画されたもので、文芸家の堀田季何(ほった・きか)氏、青山学院大学宗教部長、法学部教授の塩谷直也(しおたに・なおや)氏、日本基督教団川和教会牧師、農村伝道神学校校長の平良愛香(たいら・あいか)氏が登壇し、司会をキリスト新聞社の松谷信司(まつたに・しんじ)氏が務めた。

最初に監修者である平良氏が、同書の特徴について語った。キリスト教出版界でもLGBTをめぐる書籍は相次いで出版されているが、それらと一線を画すのは、クリスチャン当事者たちの生の声の証集となっていることだ。どのように苦しみ、どのように喜びを見出だしていったのか。そこには、「こうあるべき」という答えはないが、「神は見捨てない」というところに集約されていると平良氏は話す。また、LGBTをめぐる聖書の解釈ではなく、LGBTの生身の人間がここにいることを知ってほしいという思いが込められていることも加えた。

20人のストーリーの中で唯一の「非当事者」である塩谷氏は、同書の執筆に参加したことで、これまで気づかなかったLGBTの存在にアンテナが立ったと話し、すべての人にそれぞれの物語があり、一般化しないことが大事だと語った。トランスジェンダーである堀田氏も、LGBTは便宜上の呼び名であって、一つに括ることはできないと述べ、LGBTの人それぞれの考え方が違うことを強調した。また、カミングアウトすることがいかにリスクの高いことか自身の体験から訴えた。それを受けて平良氏は、LGBTの人がカミングアウトできないのは、命を失う恐れがあるからだとし、LGBTの当事者からカミングアウトされたことがないのは、「あなたには安心してカミングアウトできない」と判断されているからだと力を込める。

今回のトークライブでは、「当事者性」に注目。司会の松谷氏は、神道政治連盟が配布した、弘前学院大学宗教主任によるLGBT断罪の講演録に触れ、マジョリティとマイノリティの差別を考えるとき、当事者の話をいくら聞いても、非当事者の行動や思考が変わらない限り、何も変わらないのではないかと問いかけた。

塩谷氏は、相手の属性を見て「こういう人だからこうだ」という先入観が差別を引き起こしてしまうと述べ、自分自身もそういった先入観に捉われないようチャレンジ中だと話した。堀田氏は、「非当事者」も別の側面では「当事者」になり得ると考えれば、世界から差別はなくなるのではないかと語った。平良氏も、同書に関わったことで、自分の中にある差別性に向き合うことになったことを明かしたうえで、「自分が差別者になっていることに気づけば、差別を減らすことはできる」と強調した。

また、今日の日本のキリスト教界におけるLGBTを取り巻く現状についても意見が交わされ、堀田氏からは、カトリックもプロテスタントもLGBTの問題は無視できない現状であることが語られた。ただ、個々の教会や神父、牧師によって認識はさまざまだという。堀田氏は、LGBTは多様な社会に通じるきっかけであることを同書の20人のストーリーから知ってほしいと話し、さまざまな思いを持つ人たちがいたら、自分とは違うと排除せずに、神の隣人愛を思い起こしてもらいたいと語った。

障がいや人種、国籍によって「マイノリティ」とされる人たちは、家族がサポートして支えてくれるが、LGBTの人たちは、身近な人ほど敵になってしまうという。平良氏は、多くのLGBTの人たちが、家族が悲しむからという理由でにカミングアウトできずにいることを伝えた。また、教会の中では真面目な人ほどLGBTを断罪してしまいがちであると指摘し、今後の教会の課題として、「一方的に考えや答えを押し付けるのではなく、『あなたはどうしたいのか』という問いかけが重要ではないか」と結んだ。

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