日本聖公会(武藤謙一首座主教)は10月20日の声明で、エルサレムおよび中東聖公会が運営するガザのアル・アハリ病院が爆撃を受けたことによる緊急要請に連帯を表明した。
「アル・アハリ聖公会病院の爆撃に強く抗議し、イスラエルとハマスの即時停戦を求め、犠牲となった人々の魂の平安と平和のために祈りと連帯を求めます」と題する声明は、隔離壁の中に閉じ込められたガザ地区が「天井のない監獄」「世界最大の監獄」と言われるに至る歴史的経緯に触れ、日本聖公会も支援してきたアル・アハリ病院が攻撃されたことに強く抗議し、「イスラエル、ハマスの爆撃により犠牲となった人々の魂の平安を祈り、人質となっている人々の即時解放、即時停戦」を求めている。
エルサレム教区への支援については、アングリカン・コミュニオン・ニュースサービス(ACNS)のページで受け付けている。オーストラリア、カナダ、英国、米国の団体を介して支援することも可能。
声明の全文は以下の通り。
<アル・アハリ聖公会病院の爆撃に強く抗議し、イスラエルとハマスの即時停戦を求め、犠牲となった人々の魂の平安と平和のために祈りと連帯を求めます>
「わたしは神が宣言なさるのを聞きます。主は平和を宣言されます/御自分の民に、主の慈しみに生きる人々に/彼らが愚かなふるまいに戻らないように」(詩編85:9)
パレスチナでハマスとイスラエルの間で戦争が起こりました。とても悲しいことです。イスラエルとパレスチナの戦闘は、イスラエルがパレスチナに建国した時に始まります。第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺に世界は同情し、1948年、国連はイスラエル建国を認めました。イスラエル建国では、先住民であるパレスチナ人を戦争、暴力、法律で迫害、虐待し、多くの国内難民が出ました。
その後、イスラエルは自ら生み出したパレスチナ人国内難民への圧政を強めてきました。それがパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区へのイスラエル人入植であり、ガザ地区を取り巻く高い隔離壁です。イスラエルによりガザ地区の住民は隔離壁の中に閉じ込められ、食料、燃料、医薬品などの搬入も制限され、外の世界と自由に往来が出来ません。隔離壁が、「天井のない監獄」だとか「世界最大の監獄」だと言われる所以です。
今、ハマスのイスラエル攻撃が起こり、それに対してイスラエルからガザ地区への爆撃が繰り返されています。その中でアル・アハリ聖公会病院が爆撃され、大勢の犠牲者を出しました。アル・アハリ聖公会病院は日本聖公会も支援をしてきた病院です。犠牲者の中には、女性や子ども、老人など、直接に戦争に加担していない一般住民も含まれます。
イスラエルがガザ地区へ侵攻すれば、何万人もの犠牲者が出ると予想されています。10月18日には国連は安全保障会議を開き、イスラエルとハマスとのガザ地区での紛争を一時停止し、ガザ地区避難民の人道支援を求める決議案の採択を求めました。しかし、イスラエル支持をしているアメリカが拒否権を行使したために採択できませんでした。本当に悲しいこと、残念なことです。
日本聖公会は、戦後50年目の1995年に宣教協議会を開き、過去の戦争に加担してきた過ちを告白し、翌年の第49(定期)総会において「聖公会の戦争責任に関する宣言」を決議しました。以来、世界のあらゆる戦争や争いに反対し、平和を願い求めてきました。戦争で犠牲となるのは、力のない女性、子ども、老人、障碍者など弱く小さくされている人たちです。
イエスさまは、「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(マタイ25:40)と仰っておられます。私たちの立ち位置は明らかです。小さく弱くされている人々の所、そこにイエスさまがおられます。その所に、私たちも心を寄せていくのです。
私たちは、アル・アルハリ病院の爆撃に強く抗議し、イスラエル、ハマスの爆撃により犠牲となった人々の魂の平安を祈り、人質となっている人々の即時解放、即時停戦を求めます。私たちは連帯して戦争へ反対し、平和と正義の実現を求めて共に祈りましょう。
2023年10月20日
日本聖公会・首座主教
主教 武藤謙一
日本聖公会・正義と平和委員長
主教 上原榮正