イギリスの香港人教会と現地教会の関係 カリダ・チュウ 【この世界の片隅から】

2019年以降に香港から移民の波がイギリスに押し寄せる以前は、白人を主とする現地教会と香港人教会との間には大きな隔たりがあった。香港人教会がイギリスの現地教会から集会の場所を間借りしているほかは、通常、互いに交流することなく、それぞれの働きを淡々とするだけだった。

香港人移民が押し寄せる以前からイギリスにいた年配の華人牧師(中国大陸系の他、マレーシア系・シンガポール系の華人を含む)の中には英語が堪能ではない人もおり、現地教会とのコミュニケーションにも限界があった。香港からの移民がイギリスの現地教会に大量に流入したことにより、確かに新たな牧会上の問題が生じたが、香港人教会や他の華人教会にとっての最も大きな恩恵の一つは、それらの教会の牧師や信者が現地教会との協力に対してよりオープンになったことだ。

イギリスの香港人と現地教会との交流は、「同化・拒絶・統合・脱文化」といった四つのパターンの文化変容が見られる。すなわち、①「同化型」(assimilation)は香港人が現地教会に溶け込むこと、②「拒絶型」(rejection)は香港人が現地教会と一体化することを拒み、独自の集会を築くこと、③「統合型」(integreation)は香港人教会と現地教会が互いの長所と短所を補い合い、ミニストリーにおいて補完し合うこと、④「脱文化型」は現地教会と香港教会のいずれの文化も受け入れず、別の突破口を開こうとすることを指す。

この四つのタイプの教会の中で、筆者は「脱文化型」をほとんど見たことがない。むしろ、ここ数年で設立された香港人教会と従来からある現地教会の多くが、基本的には「統合型」の宣教の働きをしている。例えば、香港人教会が現地教会と協働して地域での社会奉仕をしたり、地域に住む香港人をもてなす伝道活動を企画したりしている。

香港人移民を支援するNPO「UKHK」主催のFriendship Festival

「同化型」もよく見られる現象だ。イギリスに移民した多くの香港人クリスチャンは、政治的なスタンスから北京語(普通話)礼拝を行う華人教会に対して警戒心をもっており、華人教会と関係を持つことを好まず、むしろ親しいクリスチャン仲間と一緒に白人中心の現地教会に出席している。多くの華人教会は、信徒の機嫌を損ねないためにその政治的スタンスに言及することをせず、かえって一部の羊の群れをさらに遠ざけている。この状況は、香港内の政府寄りの教会と似ている。

イギリスの華人教会では、長年にわたり異質なものに対する排他的態度が醸成されてしまった。華人教会の指導者たちは、時にイギリスの教会や文化を誤解しているところがあるように、筆者には思えてならない。例えば、イギリスの白人たちの神学は非正統的だと意図的に批判したり、イギリスの教会は衰退の一途をたどっているから華人教会によって救済される必要があると言ったりする華人牧師もいるが、これらの主張は実に不健全である。自分の神学的立場を肯定するために他者を攻撃する必要はなく、たとえ政治的・神学的立場が違うからといって、相手が地獄に落ちるわけでもないだろう。

さらには、華人牧師たちは神学修士号を取得した後に研鑽を積むことをしなくなるため、神学的知識が薄れ、新たに移民してくる香港人の課題に対応できなくなっているのは、実に残念なことだ。

ここ数年の香港人移民の急増により、2019年以前の華人教会のリソースでは、礼拝に参加する大勢の新来者(香港人)に対応するには不十分であり、アウトソーシングしてイギリス現地教会と協力するのも悪くない。イギリスに移住した引退牧師の胡志偉(ウー・ジーワイ)は、「(老舗の華人教会の)指導者たちの考え方は、自分たちが移民した時代のまま凝り固まっているかのようであり、特に教会を発展させる点において、現在の香港人のように柔軟ではない」と指摘しているが、実に的を射ている。確かに教会開拓にはそれなりの問題が伴うものだが、新しく開拓的に設立された香港人教会とその働きは、数十年の歴史を持つ華人教会にとって脅威であり、同時に自己反省を迫られるものでもある。

こうした移民教会の閉鎖的・部族主義的な因習を打破し、華人キリスト教界の神学と信仰を刷新することができれば、それはイギリスのキリスト教界全体に対しても良い実りをもたらすことだろう。

(原文:中国語、翻訳:松谷曄介)

カリダ・チュウ 香港出身の神学者。ノッティンガム大学の神学・宗教学部講師。アメリカのフラー神学校で修士号、イギリスのエディンバラ大学神学部で博士号取得。同大学神学部講師を経て、2022年から現職。主な研究テーマは、1997年の香港返還以後の公共神学。

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