韓国基督教教会協議会100周年 松山健作 【この世界の片隅から】

来る2024年9月24日は、韓国基督教教会協議会(NCCK)の100周年に当たる。「来るべき歴史、記憶される未来」という100周年記念事業のスローガンは、これまでの100年の歩みを記念しつつ、これからの100年の未来を見据えている。

NCCKは100周年記念事業の皮切りとして、まず6月27日にオンラインアーカイブを公開。オンラインアーカイブは、NCCK100周年記念キリスト教社会運動史の整理保存事業の一環として設けられ、朝鮮半島におけるプロテスタントの宣教開始以来、教育、文化、救済、医療、民主化、人権、統一、福祉などさまざまな分野での活動の記録をデジタル化したもの。現時点で2万5000件ほどの資料が、学会や一般向けに公開されている。

韓国基督教歴史文化館のアン・ギョソン館長は、「オンラインアーカイブの存在は、これからの研究の発展と開発に新たな可能性を開くものであり、韓国キリスト教と社会研究の水準を一段と高いものにする」と期待を示した。このオンラインアーカイブは、国内外の韓国キリスト教に関心のある人なら誰でもアクセス可能となっている。

NCCK100周年記念事業は、これ以外にも多岐にわたる事業を予定している。9月中旬から末にかけては国際会議も予定されており、国内外のエキュメニカルリーダーが招待される。この国際会議には、世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレイ総幹事も参加予定だという。これから100年の未来のため朝鮮半島をめぐる東アジアの平和について、さまざまなことが協議されることに期待が高まっている。

オンラインアーカイブ開設と同様、歴史を振り返る事業が予定されている。10月には韓国基督教社会運動史に関する3冊の文献のほか、NCCK100年史を出版し、出版記念会も開催される予定である。韓国のキリスト教史に関心を持つ研究者にとっては必携の書物となるだろう。また、執筆陣15人によるキリスト教社会運動史に関わる資料集も24冊という分量で刊行される予定である。100周年記念といえどもこれだけの歴史刊行物を出版できる韓国キリスト教界の体力と執筆陣の研鑽には驚嘆するばかりである。

11月18日には、長老会の新門安(セムナン)教会で、これから100年を見据えた宣教的決意と未来のビジョンを提示する「キリスト教社会宣言」(仮称)の発表が予定されている。どのような内容が盛り込まれ、社会においてキリスト教の重要性が認識されいくのか、隣国の日本からも注目したいところである。

NCCKは、今回の100周年を記念して過去の歴史の遺産を発掘すること、また反省と感謝を分かち合うこと、そして新しい100年を準備するための討論を呼びかけている。歴史を振り返り反省するという意味では、隣国として植民地を強いてきた日本との関係性は極めて深い。日本のキリスト教界としても日韓キリスト教との関係を振り返りながら、未来を準備するための韓国キリスト教におけるエキュメニカルな呼びかけに参与することが求められているのではないかと感じている。

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪府生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課程、韓国延世大学神学科博士課程(神学博士)、ウイリアムス神学館修了。現在、日本聖公会京都教区司祭、金沢聖ヨハネ教会牧師、聖ヨハネこども園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学非常勤講師など。

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