米ジョージア州アトランタで6月27日夜(日本時間28日午前)に1回目の大統領選挙テレビ討論会が行われ、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ元大統領が90分にわたり激しい論戦を交わした。両候補の対決はここから11月の大統領選挙に向けて本格化していくこととなる。
宗教の視点から言えば、米国の大統領選挙に関連して近年最もメディアで取り上げられるのはプロテスタントの保守層いわゆる福音派である。共和党の支持基盤の一つとして知られ、特に2020年大統領選挙では白人福音派の約8割が共和党のトランプに投票したとされる。
そんな中、今年の大統領選挙で注目すべきは「福音派」よりもカトリックの票であるとの見方がある。「レリジョン・ニュース・サービス」の上級アナリストを務めるトマス・リース氏は同紙に「2024年選挙はカトリック次第」と題する記事を寄せ(6月11日付)、この説を展開した。リースによれば、(「福音派」の大半が共和党に投票することが目に見えているのとは対照的に)カトリック信者の票は近年では共和党と民主党でちょうど半分ずつに割れることが多い(ただしカトリック内部でも、白人信者は共和党に、ヒスパニック系信者は民主党に投票することが多い、といったパターンはある)。
また注目すべきは、選挙のたびに勝者が共和党になったり民主党になったりする「激戦州」にカトリック住民が多数住んでいることだ。特にペンシルバニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州、ネヴァダ州は多くのカトリック人口を抱える激戦州で、彼らの票は選挙の結果に直接的な影響を与えやすいと言える。こうした統計的事実に基づき、リースは「カトリックを制する者が恐らくこの国をも制する」と述べる。
なお「ピュー・リサーチ・センター」の調査(2016年8月8日公開)によると、近年のカトリックの投票行動の特徴として、「教会指導者の影響を受けにくい」点が挙げられる。すなわち、福音派の指導者が日曜日の説教やメディアを通して積極的に政治的発言をし、一般信者の投票行動に影響を与えるのとは対照的に、米国のカトリック司祭たちは特定の党や候補者を公に支持することをせず、また礼拝などの場でも政治的話題を避ける傾向にあるとされる。つまり政治家がカトリック票を取るためには、カトリック教会の指導層ではなく一般信徒に直接的にアピールする必要があるというわけである。だがリースによれば、現状、「どちらの党もカトリックの有権者の心をつかむ決定的な鍵を見出せていない」。
移民、中絶などカトリック信者にも関心度の高いイシューが並ぶ今回の大統領選挙。残りの4カ月で彼らの票を引き寄せる大統領候補は誰なのか、目が離せない。
(翻訳協力=木村 智)