エスさん、わてを好いたはる 上林順一郎 【夕暮れに、なお光あり】

「Jesus loves me! This I know. For the Bible tells me so」

以前、NHKの大河ドラマ「八重の桜」が話題になりましたが、その中で新島襄に扮するオダギリ・ジョーが英語の賛美歌を歌うシーンがありました。それが文頭の英語の歌詞で、讃美歌(54年版)461番の原詩の最初のフレーズです。この歌は日本語に最初に翻訳された賛美歌の一つで、宣教師として横浜に来ていたジェームズ・バラによって訳されました。

その後、「主、我を愛す。主は強ければ、我弱くとも恐れはあらじ、わが主イエス、わが主イエス、わが主イエス 我を愛す」の訳になり、今日まで賛美歌の中で最も多く歌われてきたものとなりました。

以前いた教会に90歳を過ぎても熱心に礼拝に出席される高齢の女性がいました。ある日の礼拝後、「センセイ、最近耳が遠なって、説教が聞きとれまへんのや。どないしたらエエでっしゃろ?」「そりゃ、かなんなあ。そやったら、説教の間は聖書を読んではったら」「ほな、そうします」。

半年ほどたって、「センセイ、最近、目が見えにくうなって、聖書が読めまへんのや。どうないしたらエエでっしゃろ?」「そりゃつらいなあ、そやったら心の中で賛美歌を歌ってはったら」「ほな、そうします」。しばらくしてまた、「センセイ、説教の時は心の中で賛美歌を歌ってるんですが、いつも同じ歌で飽きましたわ」「なんの賛美歌?」「むかし日曜学校で習った大阪弁の『エスさん、わてを好いたはる』ですわ」。

100歳近くになり彼女は介護施設に入所しました。時々、施設を訪ねては帰り際に枕元で彼女が歌っていた大阪弁バージョンで歌いました。

「エスさん、わてを好いたはる。エスさん 強いさかいに わて弱いけど 怖いことあらへん。わてのエスさん、わてのエスさん、わてのエスさん、わてを好いたはる」

ほどなくして彼女は天に召されました。

歳をとり説教も聞こえにくくなる、聖書も読めなくなる、教会にも行けなくなる。そうなった時にどのように信仰を持ち続けることができるのか? これからの教会の大きな課題です。私は賛美歌か、と思っています。

「主に向かってわたしは歌おう。……主はわたしの力、わたしの歌/主はわたしの救いとなってくださった」(出エジプト記15:1、2=新共同訳)

20世紀最大の神学者カール・バルトは、ある日アメリカのジャーナリストのインタビューを受けました。「あなたの膨大な神学書をひと言で要約したらどうなりますか?」 バルトはしばらく考えたのち、「Jesus loves me! This I know. For the Bible tells me so」と英語で歌い、「これがすべてです」と答えたそうです(『さんびかものがたりⅤ 平和の道具と』川端純四郎、日本キリスト教団出版局)。

 

かんばやし・じゅんいちろう 1940年、大阪生まれ。同志社大学神学部卒業。日本基督教団早稲田教会、浪花教会、吾妻教会、松山教会、江古田教会の牧師を歴任。著書に『なろうとして、なれない時』(現代社会思想社)、『引き算で生きてみませんか』(YMCA出版)、『人生いつも迷い道』『ふり返れば、そこにイエス』(コイノニア社)、『なみだ流したその後で』(キリスト新聞社)、共著に『心に残るE話』(日本キリスト教団出版局)、『教会では聞けない「21世紀」信仰問答』(キリスト新聞社)など。

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