改革派教会が岸田政権に抗議 「積極的な平和外交と和解を」

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日本キリスト改革派教会大会宣教と社会問題に関する委員会(弓矢健児委員長)は7月20日、「敵基地攻撃能力保有への反対並びに防衛財源確保法の廃止を求める声明」を岸田文雄首相および浜田靖一防衛相に宛てて発出した。

声明では、敵基地攻撃能力の保有は憲法の平和主義と立憲主義の原則に違反すること、防衛財源確保法は憲法の平和主義と財政民主主義に違反することを主張し、日本がなすべきことは「憲法前文と第9条の平和主義の理念に立った積極的な平和外交と和解のために努力し、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止のための勇気ある行動をとること」だと訴えた。

声明の全文は以下の通り。


敵基地攻撃能力保有への反対並びに防衛財源確保法の廃止を求める声明

私たち日本キリスト改革派教会は、2015年に当時の安倍政権が行った集団的自衛権の行使を容認する「安保法制」の強行採決に対して、同法制が憲法の平和主義と立憲主義の原則を否定する違憲立法である等の理由から、抗議と同法制の廃止を求める声明を出しました(2015年10月15日付)。しかし、岸田政権は、日本の国を更なる戦争国家へと変質させるために、昨年12月16日、安保関連3文書(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」)の改定を閣議決定し、「敵基地攻撃能力」の保有を明記しました。さらに先の国会では、今後5年間で43兆円もの税金を投入することを明記した「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(以下「防衛財源確保法」)をも強行採決しました。私たちは以下の理由から、こうした岸田政権の対応に強く抗議すると共に、敵基地攻撃能力の保有に反対し、「防衛財源確保法」の廃止を求めます。

1.敵基地攻撃能力の保有は憲法の平和主義と立憲主義の原則に違反します

従来日本政府は、自衛隊は専守防衛の組織であって、戦争を放棄し、戦力の保持を禁じた日本国憲法第9条に違反しないと主張してきました。そのため歴代政権は、専守防衛の範囲を超える敵基地攻撃能力の保有は憲法違反であるとしてきました。それにも関わらず岸田政権は、国の安全保障の要となる「安保関連3文書」を閣議決定のみで大幅に改定し、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力の保有を明記しました。また、「防衛力整備計画」には、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークなど大量の外国製ミサイルの保有・配備も明記されています。

岸田政権は、こうした敵基地攻撃能力について、「憲法および国際法の範囲内で専守防衛の考え方を変更するものではなく」(「国家安全保障戦略」)と主張していますが、大量のミサイルで敵基地を攻撃することは、政府が主張してきた専守防衛からも大きく逸脱するものです。さらに集団的自衛権の行使を容認した「安保法制」の下では、日本が直接攻撃されていなくても、米国からの要請によって政府が「存立危機事態」と判断すれば、集団的自衛権の行使によって、日本が「敵基地」を先制攻撃することも可能となります。また、そのことによって日本の国土が攻撃の対象となる危険にもさらされることになります。

以上のように、敵基地攻撃能力保有は、日本国憲法の平和主義、立憲主義の原則に違反すると同時に、憲法第9条の下での専守防衛という従来の政府の基本方針をも否定し、日本をさらに危険な戦争国家へと変質させるものです。

2.防衛財源確保法は憲法の平和主義と財政民主主義に違反します

岸田政権は6月16日の参院本会議にて、敵基地攻撃能力を含む軍備拡大を実行するため、5年間で43兆円もの軍事費の財源を確保するために、「防衛財源確保法」を成立させました。しかし、敵基地攻撃能力保有のために、巨額の軍事費を確保することは、そもそも憲法第9条の平和主義の理念に根本的に反します。

さらにこの法律では、軍拡財源を確保するために、防衛力強化資金を創設し、本来なら一般会計に組み入れることのできない特別会計の資金を一般会計に流用させることや、独立行政法人国立病院機構及び独立行政法人地域医療機能推進機構の積立金の一部を国庫に納付させることによって、それらを防衛力強化資金として蓄え、軍拡のための財源にすることを定めています。しかも、この防衛力強化資金は国会の審議が不要で、防衛省が自由に使える資金となります。こうした「防衛財源確保法」は、まさに軍事予算を聖域化するものであり、会計年度ごとに予算を国会で審議し、作成するという財政民主主義(憲法第83条)に違反します。

また、そもそも特別会計は特別な目的のために独立の収支を確保するために設けられた会計であり、それを軍拡の財源のために流用することは、特別会計の役割を変質させます。さらに、国立病院機構や地域医療機能推進機構の積立金は本来、医療や福祉にこそ用いられるべき資金であり、それを軍拡のための財源に流用するなど、平和主義を国是とする国として、決してあってはならないことです。

日本は、「政府の行為によって戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」(日本国憲法前文)、その反省の上に、戦後、第9条によって戦争を放棄し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(同前文)国です。それゆえ、日本の為すべきことは、軍事費を倍増させ、抑止力という名のもとに敵基地攻撃能力を保有するのではなく、憲法前文と第9条の平和主義の理念に立った積極的な平和外交と和解のために努力し、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止のための勇気ある行動をとることです。

私たち日本キリスト改革派教会も、平和を実現する使命を主イエス・キリストから与えられた者として、和解と平和の実現のために祈り、行動します。

「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。」(イザヤ書2章4節)

「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。」(マタイによる福音書5章9節)

日本キリスト改革派教会
大会 宣教と社会問題に関する委員会
委員長 弓矢健児

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