「正しさ」は悪魔のささやき【聖書からよもやま話437】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は旧約聖書、 箴言の13章です。よろしくどうぞ。

箴言 13章10節

高ぶりがあると、ただ争いが生じるだけ。
知恵は勧告を聞く者と共にある。(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

現代社会はエラい人でもそうでない人でも、「私は正しい!」という人にあふれています。多くの人があっちこっちで「私は正しい!」と主張しています。そして「だから彼らは間違っている!」と勝手に「敵」を想定して攻撃しています。「私は正しい!」は「敵」の存在を必要とします。「敵」なしに「私は正しい!」は意味をなさなくなるからです。だから「私は正しい!」は常にエスカレートを繰り返します。

「私は正しい!」とはつまり高ぶりです。「私は正しい!」があると、ただ争いが生じるだけなんです。本当の知恵とは「私は正しい!」と思うところにはないんです。それは「私は正しくないかもしれない」と常に疑うこと、そして「君は正しくないよ」という勧告を受け入れる姿勢にこそ宿るものです。

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UnsplashTingey Injury Law Firmが撮影した写真

いわゆる「正義の女神」ってギリシア神話やローマ神話が元なんですけれど、右手に天秤を持っている一方、左手には剣を持っています。しかも抜き身で。戦う気満々なんです。さらにはなんと目隠しをしています。「正義」に陥った時、人は周りが見えなくなるのかもしれません。目隠しをした人が抜き身の剣を持っている。これは非常に危険な状況だと言えるでしょう。

「歴史上、もっとも争いを起こしてきたのは宗教だ」なんてことがよく言われます。でも僕は、それはちょっと違うかもしれないと思っています。歴史上、もっとも争いを起こしてきたのは「正義」ではないでしょうか。歴史上の戦争を見れば、勝った方も負けた方もどちらも「正義」の旗を掲げます。「私たちは悪だ!正義を潰してやる!ぐはははは!」なんてヒーロー番組の悪役みたいなことを言って戦争を起こす人は現実にはいません。ロシアとウクライナもそう、パレスチナとイスラエルだってそうです。どちらも「正義」を掲げています。つまり「私は正しい!」がぶつかりあっているんです。国同士のスケールから、人同士のスケールに視点を変えても同じことでしょう。人同士の喧嘩や争いが起こるとき、どちらも「私は正しい!」と主張します。子ども同士でさえそうです。

「私は正しい!」と思う時こそ、僕たちはよっぽど気をつけないといけません。そこに悪魔の落とし穴があります。悪魔は人同士の争いを好みます。そして争いを起こさせようとします。その時に用いるのは「私は正しい!」という心です。その心をくすぐって「お前は正しいぞ、あいつはまちがっているぞ。お前は正義だぞ。あいつは悪だぞ。お前は賢いぞ。あいつは愚かだぞ」とささやきます。だからこそ僕たちは「私は正しい!」という気持ちが心に生じた時こそ、「引き下がれサタン!」と言わなければいけないのかもしれません。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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