苦手なことは人に任せる。それがWin-Winのコツです。【聖書からよもやま話36】

皆様いかがお過ごしでしょうか。MAROです。今日も日刊キリスト新聞クリスチャンプレスをご覧いただきありがとうございます。

毎回、新旧約聖書全1189章からランダムに選ばれた章から心に浮かんだ事柄を、皆様の役に立つ立たないは気にせずに話してみようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、列王記第一の5章です。それではよろしくどうぞ。


◆列王記第一 5章6節

どうか、私のために、レバノンから杉を切り出すように命じてください。私の家来たちも、あなたの家来たちと一緒に働きます。私はあなたの家来たちに、あなたが言われる通りの賃金を払います。ご存知のように、私たちの中にはシドン人のように木を切ることに熟練した者がいませんから。

今日の箇所は聖書の中で最も賢い人だと言われるソロモン王が、神様のために神殿を建てようとしているシーンです。ソロモン王は、シドン(今のレバノン)のヒラムという王様と仲良しでした。今でもレバノンは杉で有名ですが、当時からそこは杉の名産地でした。そこでソロモンは神殿建設に必要な杉材の調達をヒラムに頼みました。

注目すべきはシドン人たちも、その王であるヒラムもイスラエル民族ではないことです。ソロモンは積極的に「異邦人」と協力して自らの仕事を成し遂げました。とはいえヒラムもソロモンやその父であるダビデとの交流によって、主なる神に対するある程度の信仰というか尊敬というか、そのようなものは持っていたようですが、しかし当時のイスラエルの信仰は民族信仰ですから、やはりあくまで「異邦人」だということになります。

ソロモンは「イスラエルの神の神殿はイスラエルの民だけでつくる!」と意地を張るのではなく、「自分にできないことは人に任せる」と、柔軟なやり方で仕事をしたということです。これって、現代のクリスチャンにも教訓になることだと思います。クリスチャンは往々にして「できるだけクリスチャンのコミュニティだけで、教会や聖書に関わる仕事を成し遂げたい」という意識を持っていたりします。しかし、たとえば実際に教会を建設するとなれば、不動産屋さんとか、建築業者とか、様々な仕事の人が関わりますから、「クリスチャンだけ」で仕事を成し遂げることはほぼ不可能です。特にクリスチャン人口が全体の1%程度しかいない日本ではなおさらのことです。

もちろんソロモンはヒラムから杉材を提供してもらうかわりに、小麦とオリーブ油をヒラムに提供しました。これも同じように現代クリスチャンで考えれば、自分たちにできないことはノンクリスチャンにお任せする代わりに、教会側も教会ならではの「得意なこと」を社会に提供すべきだということになります。

・・・と、簡単に言ってしまえば「持ちつ持たれつだよね」という、恐ろしくシンプルな結論になるのですけれど。でも、クリスチャンに限らず、意外と多いです。自分の苦手なことまで自分で抱え込んでやろうとする人。苦手なことは人に任せて、自分は得意なことをやる。それがWin-Winの関係を築くコツかと思います。日本の社会って反対に、「お互いに負担を平等にしましょう」とか言って、みんながそれぞれ自分の苦手なことをやる、なんていうシーンが多い気がします。これって子どもの頃から「苦手なことでも頑張ることがえらいのだ」という教育を強く受けてるからなのでしょうか。たしかに子どもの頃には苦手なことにも挑戦してみるという経験をすることも必要でしょうし良いことでしょうが、大人になってまで「苦手なことに挑戦!」というのは必ずしも良いこととは言えません。

苦手なことは得意な人に任せて、自分は得意なことをやる。シンプルですけど大切なことだと思います。

それではまた。
主にありて。MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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