「なまり」と「処刑」と「プロレスファン」【聖書からよもやま話20】


皆様いかがお過ごしでしょうか。毎日の食事を「麦飯・味噌汁・焼魚・ぬか漬け」の四点セットにしたらかなりしっかり食べているのに痩せてきましたMAROです。今日も日刊キリスト新聞クリスチャンプレスをご覧いただきありがとうございます。

毎回、新旧約聖書全1189章からランダムに選ばれた章から心に浮かんだ事柄を、皆様の役に立つ立たないは気にせずに話してみようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、士師記の12章です。それではよろしくどうぞ。


◆士師記 12章6節

その人に、「『シボレテ』と言え」と言い、その人が「スィボレテ」と言って、正しく発音できないと、その人を捕まえてヨルダン川の渡し場で殺した。こうしてそのとき、四万二千人のエフライム人が倒れた。


この箇所はイスラエル民族内の「ギルアデの人々」と「エフライム人」での内戦を描いているのですが、人の言葉の訛りによって敵を見分けて殺したというのですからずいぶんひどい話です。エフライム人の側もこれ以前に「それはずいぶんな理不尽だろ」ということをギルアデの人々にしているのですが、それにしても言葉の訛りで処刑するとはやりすぎです。

この「シボレテ」という言葉はもともとはヘブライ語で「川の流れ」という意味の言葉なのですが、このエピソードに由来して現代では「シボレス」という形で「ある文化集団の構成員か否かを見分ける指標」という意味で用いられています。日本語の「絞れてきた!」とかにも似ているのが面白いですよね。覚えやすいですからぜひ覚えていただければと思います。

プロレスファンの間では試合の行われる日付を「○月○日」ではなく「○.○」と言います。例えば毎年1月4日に東京ドームで行われる大会は「1.4(イッテンヨン)東京ドーム」と言います。これを「1月4日東京ドーム」と言ってしまうと「あぁこの人はまだプロレス初心者だな」と思われますし、ちゃんと「イッテンヨン」と言えば「こいつ、わかってるな!!」と思われます。もちろんプロレスファンは「1月4日」と言ってしまったからといって意地悪をしたり、まして殺したりはしませんし、むしろ「新しいプロレスファンだ!嬉しい!」と歓迎ムードになります。

反対にプロレスと関係ない例えば今日の日付を、「ハッテンヨン」とか言う人がいたら「この人もしかしてプロレスファンかな!?友達になれるかも!?」とワクワクします。日付の言い方がプロレスファンとそうでない人をみわけるシボレスになっているわけです。

シボレスは人を処刑する時ではなく、友達になれそうな人を見分けるときにこそ使いたいものですね。

 

それではまた。
主にありて。MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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