Q.教会の役員こそ、積極的に他教派の集会に出て、視野を広げるべきだと思いますが…。(50代・男性)
その提案に私も賛成です。しかし、簡単には実現できないと思います。順序からすれば、牧師や司祭の方が他の教派や教団との学びや交わりに参加されるのが出発点だと思います。その上で、役員の方も一緒に参加されていくのが自然です。そして、こうした集会への参加には、教会の方への目的説明が必要です。そうでないと信徒の方に混乱や反対が予測されます。
教派・教団に所属する教会にとって他の教派・教団は、キリストにある教会であると共に、自分たちとは立場も考えも異なる教会でもあります。よって、簡単には一緒に行動や交わりを持てない間柄でもあります。その違いを乗り越えられるかは、自分たちの信仰と他の教派・教団の違いを、普段からどのように教会で語られているか、また学んできたかが問われてきます。また、牧師や司祭の方がこれまでの信仰の歩みにおいて、他教派・他教団との接点を持ってこられたかも大きく影響します。
教会において、他の教派・教団との違いが強調され、また自分たちの信仰を厳格に教えられていれば、他の教派・教団に対する距離は遠く、壁は高くなるのは当然のことです。教会への誇りや愛着が強ければ、他の教派・教団への関心は弱くなります。
教派・教団は、教会の歴史の中で生まれてきましたが、神のみ心の反映かといえば、そうではありません。教派・教団の誕生は私たち信仰者の未熟さと頑固さのゆえに生まれた面があります。
よって、もし教派・教団が行き過ぎを反省し、互いに協力し補い合うことができれば、証しの面においても宣教の面においても、今よりもっと大きな働きをすることができます。
教派・教団を一気に解消することは不可能であっても、他の教派・教団との相互理解や協力はできます。まず、他の教派や教団に関心を持ち、私たちの身近な地域の教会との交流や協力から始めてはどうでしょう。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
かつもと・まさみ 1950年熊本県生まれ。聖契神学校卒業後、立正大学仏教学部(日蓮宗)を卒業。あわせて僧階課程を修了。その後、仏教大学で仏教学(浄土宗)を専攻。神道や民俗宗教の学びの必要を覚えて、神道宗教学会に加入。郷里熊本で牧会の後、1990年から千葉県流山市で開拓伝道を開始した。後に日本聖契キリスト教団に加入し、聖契神学校講師(比較宗教·日本教会史)を担当。著書に『日本人の生活習慣とキリスト教』『日本の宗教行事にどう対応するか』(いずれもいのちのことば社)など。