カミの本が売れない? 小倉仁史 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

伝道の地として与えられた盛岡での生活は、春に神学校を卒業する妻と一緒に招聘してくださる教会へと移るため、たった1年で離れなければならなくなりました。極寒の盛岡での冬もひと冬越せば勝手が分かると言われており、雪の時期の雪かきや灯油の買い通い、氷点下10度を超す夜は「水落とし」(家中の水道管の水を抜く作業)をするなど、なんとか生活のリズムをつかんできたころでした。

認定こども園でのチャプレンの仕事に加え、盛岡市から民営化される保育園の準備室長として、また、学校法人岩手キリスト教学園の経営戦略室の室長というお仕事も拝命しました。用地の買収や、盛岡市や建築業者との折衝、銀行や弁護士、警察などとの打ち合わせ、学校法人の理事会向け資料の準備や各種分析など、奉仕の幅がとても広がっていた時でもありました。

充実した奉仕の日々である一方、福音伝道と教会牧会という観点で見ればやはり1年という期間はとても短すぎます。神さまが願っていたことがやり切れなかったのではないか、という深い悲しみを今でも背負っています。そのような盛岡での日々でしたが、携われて本当に良かったと思っているご奉仕を紹介したいと思っています。それは善隣館書店に関するご奉仕です。

北東北三県(青森・秋田・岩手)で唯一のキリスト教書店である善隣館書店は、全国の他のキリスト教書店と同様に、キリスト者の減少や高齢化による聖書や神学書の需要減少、またパソコンやスマホの普及による急速な本離れなどに伴い、存続の危機を迎えようとしていました。「神の本が売れない」と「紙の本が売れない」の二重の苦難を背負っていたのです。

北東北の文書伝道の灯を消したくない。そのような想いと祈りから、学校法人岩手キリスト教学園は善隣館書店の経営支援に乗り出すことを採決し、私は具体的な支援スキームの作成や実行の部分を担わせていただくとになりました。学校法人が一般企業を支援する、この難しさに直面しながらも、この事例が成功すれば、同様の苦しみを負っている全国のキリスト教書店がもしかしたら新しい道を歩めるかもしれない。北東北のこの事例を通して日本全国の文書伝道に新しい希望の光が与えられるかもしれない。そう信じて祈り、このプロジェクトに取り組みました。そしてこの4月、善隣館書店は新しい書店のあり方やこれからの時代を捉えた文書伝道に向かって、学校法人岩手キリスト教学園とともに歩み始めることができました。

「地方こそが、これからの日本の歩む道を先んじているのかもしれない」。そう考えさせられる貴重なご奉仕の一つとなりました。他にも、地方ならではの教会間の豊かな助け合いや、教派や出身学校を超えた牧師同士の仲の良さやなどお伝えしたいことは山ほどありますが、どうやらまた別の機会になりそうです。

コレカラの信徒のみなさん、あなたの街に来る牧師・伝道師は住み慣れた土地を捨てて、与えられた伝道の地に住む人たちのことを毎日祈り、一人でも多くの人を教会に招こうと全力で立ち向かっています。手を取り合って協力し、豊かな伝道の果実が各地に実りますように祈っています。

おぐら・ひとし 1977年東京都生まれ。サラリーマン時代は仕事の後にMBAを学びに行くほど経営や経済に夢中だったのに、ある時聖書に出会い35歳で受洗。約20年のサラリーマン生活を捨てて東京神学大学へ編入学。同大学院修了後、日本基督教団舘坂橋教会、2023年度より日本基督教団本牧めぐみ教会に赴任。好きなことは子どもに関わることとテニス。

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