さあ、バルナバとサウロをわたしのために選び出しなさい。わたしが前もってニ人に決めておいた仕事に当たらせるために。(使徒言行録13章2節)
主を礼拝し、断食して祈っているアンティオキア教会の信徒たちに、聖霊が今日の聖句を告げた。聖霊は、主の言葉を聞き、祈る者たちに、教会が為すべき神の御心(みこころ)を告げ、これを遂行させる。使徒言行録は、使徒たち、信徒たちを宣教へと押し出し、御業(みわざ)をなさせた「聖霊の言行録」である。教会は神が決めた仕事に当たらせるために、パウロとバルナバの上に「手を置いて」(3節)、祈った。手を置く按手(あんしゅ)によって、教会はパウロたちの宣教が教会の業であることを確認し、その業のために聖霊と神の祝福を祈ったのである。こうしてパウロとバルナバはマルコを伴い、アンティオキアを出発した。一行は、セレウキア港から出航し、キプロス全島を巡回して伝道した。それからパンフィリア州のベルゲに渡った。ここで、マルコはエルサレムに帰った。伝道旅行は緒(ちょ)に就いたばかりであったが、若いマルコには厳しかったと推察される。ベルゲから山脈を越え、ピシディア州アンティオキアに入る。ここは古代の重要都市で、現在、丘の上にあるアウグストス神殿の遺跡と、中腹にあるユダヤ人会堂跡を見ることができる。パウロたちは「安息日に会堂に入って」(14節)、まずユダヤ人に伝道し、それから異邦人に伝道した。民衆はこれを聞いて喜ぶ者と、口汚くののしって反対する者とに分かれた。著者ルカは「永遠の命を得るように定められている人は皆、信仰に入った」(48節)と記し、人が救われるのは神の恵みによる選びであることを強調する。「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ」(ヨハネ15・16)。