米大統領選まで262日。アンドリュー・ヤン氏(45)が11日に撤退表明をし、民主党の候補は8人まで絞られた(ジョー・バイデン氏、マイケル・ブルームバーグ氏、ピート・ブティジェッジ氏、トゥルシー・ギャバード氏、エイミー・クロブシャー氏、バーニー・サンダース氏、エリザベス・ウォーレン氏、トム・ステイヤー氏)。
カナダ国境に接する北部のニューハンプシャー州で予備選が11日、行われた。共和党の予備選では、現職のドナルド・トランプ大統領(73)が86%の票を得ている。
民主党の選挙結果は以下のとおり。
サンダース氏 得票率25・7%(代議員数12)
ブティジェッジ氏 24・4%(9)
クロブシャー氏 19・8%(6)
ウォーレン氏 9・2% (0)
バイデン氏 8・4%(0)
ニューハンプシャー州は、サンダース氏が上院議員として働いてきたバーモント州の東隣に位置することもあり、同氏が優勢なのは予想された。
今回の選挙で特に人々を驚かせたのは、3位にエイミー・クロブシャー氏(59)が入ったことだ。ニューハンプシャー州でクロブシャー氏が躍進した理由として、特定候補を応援していない浮動票が同氏に流れたことが考えられる。ただし、今回の結果を含めてもなお、クロブシャー氏が本選挙に進む可能性はきわめて少ない。
ウォーレン氏とバイデン氏はどちらも、選挙戦の中途統計では最上位に入っていたが、予想以上の苦戦を強いられている。
1941年生まれのサンダース氏は現在78歳。トランプ氏は米国史上最年長の70歳で大統領に就任したが(レーガン大統領は69歳)、それよりも年齢が上であることがしばしば不安の種として取り沙汰(ざた)されてきた。
二大政党制である米国では珍しく、サンダース氏は無所属の政治家として最も長い期間、上院議員を務めてきた。その前には下院議員を16年間務めており、1980年代には8年間、バーモント州バーリントン市長を務めている。前回の2016年大統領選挙では、民主党候補としてヒラリー・クリントン氏と接戦を演じた。
サンダース氏が築いた40年の政治家としてのキャリアの中で特徴的なのは、訴えてきた政策がまったくブレないことだ。
環境問題を重視し、社会保障の改善、富裕層への増税、人種差別撤廃を訴えるサンダース氏は、特に若い世代から熱い支持を得ている。
いわゆるプログレッシブ(革新)急進派であるサンダース氏の訴える政策は、ウォーレン氏(70)のものと似ているものが多い。二人はアメリカ政治における長年の戦友だが、議論が白熱することもあり、二人の戦いは米メディアの注目を集めている。
サンダース氏は、ユダヤ系ポーランド人移民の両親のもと、ニューヨークのブルックリンに生まれた。ピュー研究所の調べによると、ユダヤ人の5人に1人は「無宗教」であると答えており、ユダヤ人=ユダヤ教徒というわけではないが、サンダース氏は、ユダヤ教徒の成人男性としての儀式(バー・ミツバ)を受けており、「ユダヤ人としての宗教的背景がなければ選挙に出ることもなかっただろう」と語っている。ただし、日常的にユダヤ教徒としての宗教活動を行っているわけではない。
今回の民主党予備選の争点のうち、投票が大きく分かれる要素の一つは「宗教」だ。それは必ずしも宗教グループ同士の競争を指すわけではなく、宗教色の強い候補と薄い候補という、より広い文化的な土壌の違いも表している。実際に、キリスト教に強い関心を持つ人ほどカトリックのバイデン氏(77)を応援し、宗教に関心が薄い人ほどサンダース氏を応援するという調査結果が出ている。
総合的社会調査の2018年調査結果を見ると、無宗教と答えた米国人は全人口の23%で、これは福音派やカトリックとまったく同じ数字となっている。2008年の調査結果(17%)と比べると明らかに上昇しており、米国における組織宗教の影響が減少し続けている傾向を示している。
サンダース氏は、さまざまな調査で民主党候補の主役と見なされている。しかし、ニューハンプシャー州でクロブシャー氏が多くの票を集めたように、今回の予備選は浮動票の占める割合が大きい。政治統計サイト「538」では、トップを走るサンダース氏に投票すると見込まれている票数と同じほどの票数が浮動票と予測されている。米大統領選はまだ始まったばかりだが、このデッドヒートは最後まで続くだろう。