聖セシリア女子短期大学(神奈川県大和市、安藤公子学長)は4月25日、2020年以降の学生募集を停止することを発表し、廃止する方針を決めた。同短大を運営する大和学園ではほかに、聖セシリア女子中学校・高等学校(1929年設立)、聖セシリア小学校(32年設立)、聖セシリア幼稚園(53年設立)、聖セシリア喜多見幼稚園(35年設立)があるが、その経営は変わらない。
同短大は長年、幼稚園教諭や保育士など、幼児教育に携わる人材を輩出してきたが、4年制大学志向や保育者の冷遇など、社会状況の影響を大きく受け、09年からは定員割れが続いていた。大和学園は今年、創立90周年を迎えるにあたり、学園の組織や機構の見直しを進めてきたが、「少子化の影響で、今後の改善も見込めない」として学生募集を停止し、短大自体を廃止する方針を3月22日の理事会で決定した。
同短大は、幼児教育学科のみの2年制単科大(入学定員100人)で、150人が在学している。現在の1年生80人が卒業する21年3月以降、文部科学省に廃止認可を申請する予定。ただ、「こうした中でも、在学生が充実した学生生活を過ごせるよう、教育活動や学生生活支援・就職支援は今後も万全を期して取り組む。また卒業後も、就職支援・各種証明書の発行など、大和学園で組織的に対応し、在学生・卒業生への支援体制を整えていく」と学園の法人本部は話す。
1929年、伊東静江が大和学園を創立。50年、大和農芸家政短期大学を開学して、幼稚園から小学校、中学、高校、短大とつながる総合学園となった。67年、保育者不足という社会のニーズに応えて、短大に保育科を設置。73年、大和学園女子短期大学に改称した。79年、創立50周年を機に「聖セシリア」に校称を変更したのに伴い、84年、大和学園聖セシリア女子短期大学、2004年、聖セシリア女子短期大学に改称。19年に学園創立90周年を迎えた。
聖セシリアは3世紀の殉教者で、「わたしは……天から響くのを聞いた。わたしが聞いたその音は、琴を弾く者たちが竪琴を弾いているようであった。彼らは……新しい歌のたぐいをうたった」(黙示14:2~3)という中にセシリアも加わっていたとされ、そこから音楽の守護聖人とされた。
創立者の伊東静江(1893〜1971)は、小田急電鉄創立者の利光鶴松(としみつ・つるまる)の娘。聖心女子学院語学校に入学し、外国人シスターの生活と精神に感動して洗礼を受けた(洗礼名モニカ)。卒業後、キリスト教精神に基づく学園創立を志し、1929年、大和学園高等女学校を設立。「教育には信仰と自然の恵みが欠かせない」という信念とともに、学ぶ者も教える者も共に神を信じ、希望し、愛深い心をもって人を愛し、社会に奉仕する人材となることを目的とした。一信徒によるカトリック学園の創設は世界的にもあまり例がない。