靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議は2月11日、第49回目となる「信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会」を仙台国際センター(仙台市青葉区)で開催し、招かれた元朝日新聞記者の植村隆氏(「週刊金曜日」発行人兼社長)が「アベ政治が歪めた『歴史認識』――歴史修正主義と闘うジャーナリストからの報告」と題して講演した。3年ぶりに対面での開催となった今回は約350人が参加。
初めに主催者を代表して、宮城県高校教員の豊永敏久氏がロシアのウクライナ侵攻や安倍晋三元首相の銃撃、統一協会、国葬問題など、この間の情勢について述べ、「日本国憲法9条の『真意』が問われる事態」「『防衛のための敵基地攻撃論』や12月に与党内で合意された防衛費の増額は、戦後日本の安全保障政権の大転換」と危機感を露わにした。
講師の植村氏は1991年、大阪朝日新聞に当時ソウル在住で元日本軍「慰安婦」の女性が証言を始めたという特ダネ記事を執筆。しかし、第二次安倍政権下にあった23年後の2014年、記事が「捏造」であると攻撃され、激しいバッシングを受けた。週刊文春では「挺身隊は慰安婦とは無関係」「強制連行があったかのように記事を書いており、捏造記事と言っても過言ではないと」などの非難がなされ、就任が決まっていた大学への攻撃に続き、非常勤として勤めていた北星学園大学へも「辞めさせろ」という抗議メール、電話のほか、家族に対する脅迫状まで届いた。
その後、攻撃を主導した西岡力、櫻井よしこの両氏を名誉棄損で提訴。事実と違う発言の撤回などを求めたが、札幌地裁は2018年、櫻井氏が取材をせず「捏造」と決めつけた責任を免除する判決を下し、最高裁でも敗訴。東京地裁も虚偽情報に基づく西岡氏のバッシングを免責し、最高裁も追認するという結果に終わった。安倍元首相は敗訴確定のタイミングで「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定した」と事実とは異なる情報をフェイスブックに投稿。植村氏の抗議で削除するも謝罪はなかった(http://gendainoriron.jp/vol.04/serial/se01.php)。
植村氏はこれらの体験を踏まえ1985年、西ドイツのヴァイツゼッカー大統領が述べた「他の人々に対する敵意や憎悪に駆り立てられないようにしてほしい」との発言を引用した上で、「日本は嫌韓意識を克服できていない」と指摘。2012年以後、「国境なき記者団」の発表する世界報道自由度ランキングが下がり続け、2022年には71位まで陥落したことを受けて、「多くのジャーナリストが委縮している。『記憶されない歴史は繰り返される』という事実を次世代に伝え、報道の自由が担保される社会が生み出されることを願い、闘い続けたい」と決意を語った。
最後に2017年、平和と人権を守るジャーナリストを育てるための「日韓学生フォーラム」を立ち上げたことを紹介し、「日本は安倍政治によって無茶苦茶にされたが、こんな時代だからこそ他者と共に生きる寛容な心と勇気が必要」と訴えた。
主催した靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議には、仙台キリスト教連合、仙台平和を求めるキリスト者の会、仙台靖国法案阻止キリスト者連絡会、東北大学学生キリスト教青年会、日本キリスト改革派教会、日本キリスト教団東北教区社会委員会、日本バプテスト連盟東北地方連合など、信仰、教派を超えて50の団体が加盟している。