【インタビュー】東京基督教大学学長 山口陽一さん(前編) 時代に適応しながら、変わらない聖書信仰を守っていく

 

福音派の諸教会を背景とする日本で唯一の4年制神学大学、東京基督教大学(TCU、千葉県印西市)は来年、創立30周年を迎える。8日に卒業礼拝を終えたばかりの山口陽一学長に話を聞いた。

山口陽一学長

──昨年4月に学長になられて変化はありましたか。

私はこれまでTCUで牧師養成の働きを担ってきました。ただTCUは、牧師だけでなく、信徒の献身者を育成していますから、その点では私のスタンスは大きく変わりました。牧師養成への集中から、信徒として献身していく人たちをどう育て、どう応援していくか。ここのところは意識を大きく変えています。

──TCUは神学大学や神学校とは違うのでしょうか。

私たちは神学校と神学大学の両面を持っています。プロテスタントの神学大学で牧師養成をしているのは、同志社、東京神学大学(東神大)、関西学院、西南学院です。その中で、入学者をクリスチャンに限るのは東神大とTCUです。ただ、東神大は牧師養成に特化しており、私たちは信徒献身者と牧師の養成という両方を持っているところが違います。神学校的要素と大学の要素の両方を持っているので、一般大学との交流もあり、主流派と福音派の神学校との交流もあります。

──学生はどんな違いがありますか。

TCUでは、受洗して、教会に属し、キリストへの献身を表明する人を迎えています。他の神学校と比較すると、若い献身者がたくさん集まっているのが特徴です。信徒として献身する若い人たちも多く、そういう意味では裾野が広いといえます。卒業後も、教会や伝道団体だけでなく、福祉施設、一般企業、NGO、教育機関など、それぞれの場所に遣わされていきます。

──キリスト教福祉学専攻があります。

優秀な学生が多く、就職率も抜群ですね。キングスガーデンをはじめ、クリスチャンの働き人を求める福祉関係の事業所はたくさんありますから。大学自体も、そういった団体とつながりを持って情報を共有しています。このあたりのことも神学校ではできない部分です。

またユース・ミニストリー副専攻(学部共通)では、中高生の心理や社会性、宗教性などから、若者への伝道や信仰の成長、心のケアなどについて学びます。そこで若い人と教会の間に立てるような人材を養成し、hi-b.a.(高校生聖書伝道協会)などにスタッフを送り出しています。これも普通の神学校では直接的にはしていないことです。

──留学生が多く、国際色豊かという印象があります。

全学生の4分の1が留学生で、2001年からは、英語だけで学位が取れるようにしました。これは日本の大学の中でも早い取り組みです。留学生も日本の学生と同じ寮に暮らすので、国内留学のような環境が日本の学生たちにはあると思います。

──そのように多くの留学生と共に学ぶことが可能になった理由は何でしょうか。

意識的にアジアやアフリカの学生を受け入れたことにあります。さまざまな問題で福音主義神学の勉強ができない国や地域から、生活費までまかなうフルの奨学金をつけて、毎年5人まで迎えるようにしました。これには少なくない犠牲を払ってきました。それでも、アジアやアフリカなどの国から学生を迎えることは、世界のキリスト教界に貢献することだと思っています。またアジアの中では、太平洋戦争の頃からのいろいろな責任を覚えながら、どういう貢献ができるかをいつも考えてきたということもあります。

20年近く続けてきた今ではプログラム自体も好評で、自費で入学する人も増え、今は、米国、カナダ、ブルガリア、イスラエルからの学生や、海外からの帰国者、在日外国人教会からの学生も増えています。いま学生数290人を目標としているのですが、留学生だけ突出して増えるのではなく、全体的に増えていくことを目指しています。

──時代の流れの中で教育には何か変化はありますか。

大学教育は、しばらく前とは内容がまったく違います。アクティブ・ラーニングとか、コミュニケーション能力の強化とか。もちろんITのスキルも要求されますから、取り入れるものはしっかり取り入れています。礼拝でも、オーソドックスな賛美歌だけでなく、プレイズ・ワーシップなども賛美します。説教スタイルも、今の時代に適応したやり方で若い世代に伝えていくことを考えています。このように時代の要請に応えながらも、「聖書は誤りない神の言葉」という福音派の伝統を頑固に守っていきます。「ただ守るだけ」というのはある意味簡単なことですが、「適応しながら変えないものを守っていく」というのがTCUの考えです。(後編に続く)

 






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