2019年参院選② 自由民主党の歴代クリスチャン議員を振り返る

 

2017年の第48回衆院選で284議席、その前年の第24回参院選では6議席増の121議席を獲得した自由民主党(自民党)。第45回衆院選(09年)では民主党308、自民党119だったのが、民主党政権への失望から、第46回衆院選(12年)で自民党294、民主党57と大勝して第一党に返り咲き、政権を奪還した。

自由民主党本部(写真:Lombroso)

これまでの参院選での獲得議席の推移を見てみよう(21、22回は民主党が第1党だったが、それ以外は2位の政党と議席数も参考のために併記する)。

24回(16年)121議席(2位、民進49)
23回(13年)115議席(民主59)
22回(10年)84議席(1位、民主106)
21回(07年)83議席(1位、民主109)
20回(04年)115議席(民主82)
19回(01年)111議席(民主59)
18回(98年)103議席(民主47)
17回(95年)111議席(新進57)
16回(92年)107議席(社会71)
15回(89年)109議席(社会68)
14回(86年)143議席(社会41)
13回(83年)137議席(社会44)

第90、96~98代内閣総理大臣の安倍晋三氏 ©内閣官房内閣広報室

今回の参院選では、改選67人に対して選挙区49人、比例33人、合わせて82人が立候補している。有名人は立憲民主党に比べると少なく、元F1レーサーの山本左近(やまもと・さこん)氏(比例)と、愛媛のローカル・タレントのらくさぶろう氏(愛媛選挙区)くらい。現職が58人で、あとは県議など地方政界経験者や政党役職員、官僚出身者といった手堅い候補者を揃えた印象だ。

現職では、元大阪府知事の太田房江(おおた・ふさえ)氏(大阪選挙区)や元岡山県知事の石井正弘(いしい・まさひろ)氏(岡山選挙区)、元アナウンサーの丸川珠代(まるかわ・たまよ)氏(東京選挙区)。また、比例区では、前横浜市長の中田宏(なかだ・ひろし)氏、弁護士の丸山和也(まるやま・かずや)氏、元スケーターの橋本聖子(はしもと・せいこ)氏、元女優の山東昭子(さんとう・あきこ)氏、イラク先遣隊長などをした佐藤正久(さとう・まさひさ)氏。鹿児島選挙区には参議院議員会長の尾辻秀久(おつじ・ひでひさ)氏、山口選挙区には文部科学大臣の林芳正(はやし・よしまさ)氏、和歌山選挙区には経済産業大臣の世耕弘成(せこう・ひろしげ)氏などもいる。

石破茂氏(写真:sakaori)

この中でクリスチャンがいるかどうかは分からないが、衆議院議員では、鳥取1区の石破茂(いしば・しげる)元幹事長が日本基督教団・鳥取教会員として有名だ。

母方の曾祖父が、新島襄の愛弟子である金森通倫(かなもり・みちとも)。熊本バンドの一人として熊本洋学校から同志社へと進み、同神学校を卒業後は日本組合基督教会・岡山教会の牧師を務め(1880~86年)、40代でいったん棄教するものの、その後、救世軍やホーリネス教会で活躍、晩年は葉山の洞窟で暮らすという数奇な人生を歩んだ。

金森の妻、旧姓西山小寿(にしやま・こひさ)は神戸英和女学校(現在の神戸女学院)の第1期生で、岡山の山陽英和女学校(現在の山陽学園)の創立者の一人(初代専任教師)。二人の間にできた長男、太郎が石破氏の祖父、そしてその長女の和子が石破氏の母親となる。父親は鳥取県知事から参議院議員になった石破二朗(いしば・じろう)で、クリスチャンではなかったが、母親が通っていた鳥取教会で石破氏は洗礼を受けた(現在も現住陪餐会員)。同教会の宣教師によって始められた愛真幼稚園に通い、鳥取大学教育学部附属中学を卒業後、東京に出てきて慶應義塾高等学校に進むと、日本キリスト教会の世田谷伝道所(現在の世田谷千歳教会)に出席して、教会学校の教師も務めた。

麻生太郎氏(写真:World Economic Forum)

福岡8区で副総理・財務大臣の麻生太郎(あそう・たろう)氏(第92代内閣総理大臣)はカトリックで、洗礼名は「フランシスコ」。その家系の中では、祖母の吉田雪子(よしだ・ゆきこ)がまずカトリックの洗礼を受け、長男(評論家の吉田健一)以外、その子どもは皆、カトリックとなり、麻生氏の母親である和子(三女)も聖心女子学院を卒業した信者。洗礼名は「マリア・ドロテア」。父親の麻生太賀吉(たかきち)もカトリックであったことから、その長男である太郎氏にも幼児洗礼が授けられた。

吉田茂

祖父の吉田茂(よしだ・しげる、1878~1967年、第45、48~51代内閣総理大臣)もカトリックに好意的で、1964年に建設されたカトリック関口教会(東京大司教区の司教座聖堂)の後援会会長も引き受けた。その主任司祭である濱尾文郎(はまお・ふみお)氏(後の枢機卿)に「死にそうになったら、洗礼を受けて『天国泥棒』をやってやろう」と語り、実際、濱尾から臨終の洗礼を受け、「ヨゼフ・トマス・モア」の洗礼名が与えられ、関口教会で葬儀が行われた(国葬は日本武道館で)。

カトリックではほかに、長崎4区の北村誠吾(きたむら・せいご)氏がいる。大学卒業後、長崎の衆院議員の秘書となり、その議員がクリスチャンだった影響で、34歳の時にヨハネ・パウロ2世から洗礼を受けた。「汝(なんじ)の敵を愛せよ」が座右の銘だという。それから、静岡1区で前法務大臣の上川陽子(かみかわ・ようこ)氏、参院比例代表の山谷(やまたに)えり子氏がいる。

原敬(写真:Elsie F. Weil)

吉田のほかにも、自民党の歴代首相の中にはクリスチャンがいる。第19代内閣総理大臣の「平民宰相」である原敬(はら・たかし、1856~1921年)はカトリックの神学校で学び、16歳の復活徹夜祭(1873年4月12日)に洗礼を受け(洗礼名ダビド)、宣教師の伝道旅行について学僕をしていた。

左から鳩山薫、威一郎、一郎、由紀夫(写真:産経新聞)

第52~54代内閣総理大臣の鳩山一郎(はとやま・いちろう、1883~1959年)も詳細は分からないが、クリスチャン。孫である鳩山由紀夫(ゆきお)氏は言う。「祖父が毎月のように賛美歌を歌うために親戚を集めて、鳩山会館で歌っていた。そのことを懐かしく思います。祖父はある意味、キリスト教の心を理解していた。『友愛』という言葉をこよなく愛した男」(クリスチャン新聞)。その父親で衆議院議長を務めた鳩山和夫(かずお、1856~1911年)が米国留学中、ジョン・アボット牧師の家に寄留していたこととつながりがあるのかもしれない。

大平正芳(写真:内閣官房内閣広報室)

第68・69代内閣総理大臣の大平正芳(おおひら・まさよし、1910~80年)も19歳の時、カリスマ的な伝道者である佐藤定吉(さとう・ていきち)の「科学と宗教」と題する講演をきっかけにイエスの僕(しもべ)会の研修会に参加。佐藤の学生伝道を助け、路傍伝道もしたという。29年、日本キリスト教会・観音寺教会(香川県)でW・ブキャナン宣教師から洗礼を受けた(「四年十二月二十二日 大平正芳」と記された受洗志願書が残っている)。上京後も矢内原忠雄の集会に参加している。「キリスト新聞」(67年)のインタビュー記事に、「聖書から離れて生きることはできない。祈りの中に神さまとの対話もつづけている」と語っている。

尾崎行雄

自民党ではないが、その源流の政治家で「憲政の神様」「議会政治の父」と呼ばれた尾崎行雄(おざき・ゆきお、1858~1954年)は、1875年のクリスマス、17歳の時に、英国聖公会のカナダ人宣教師で英語教師だったA・C・ショー(軽井沢ショー記念礼拝堂を設立した)から洗礼を受けている(聖アンデレ教会の教会員原簿の最初の頁に名が記されている)。ショーが来日後、慶應義塾の近くに滞在していたことから、塾長の福澤諭吉が子どもに英語を教えてほしいと、家庭教師として3年間雇われ、慶應義塾の英語教師もしていた。その中に尾崎もおり、ショーの司式する礼拝に出席していたという。尾崎は「The Salvation Army」を「救世軍」と初めて訳してその働きを紹介したことでも知られ、その後も救世軍の創立者ウィリアム・ブースが来日した時には歓迎会を開き、また1907年の万国学生基督教青年会大会も支援している。

 






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