マイノリティ宣教センターが入管法改悪に危機感 教会共同声明の賛同に58団体

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マイノリティ宣教センター(マッキントッシュ・デイビット、渡邊さゆり共同主事)が3月13日に発表した教会共同声明「“Open Japan’s Gate for All” すべての人に、日本の扉を開けてください――難民申請者を追放する『出入国管理及び難民認定法』の改悪に反対する教会共同声明」に対し、50の国内キリスト教団体、教会、八つの海外キリスト教団体が賛同者として名を連ねた。入管法の改定法案は近く衆議院法務委員会で採決が行われるとの見方が出ており、難民支援団体をはじめ同法案に反対する関係者らが危機感を強めている。

同センターは4月21日、「移住者と連帯するネットワーク(移住連)」のツイキャスライブ「入管法改悪に反対する緊急アクション」について、「審議されている入管法改悪案では、ますます外国にルーツを持つ日本の住民は差別と排除されます。帰国できないいのちの危機にある人を追い出し、生きる権利を剥奪します。この法案を許してはなりません」とコメントした。

教会共同声明の全文は以下の通り。


“Open Japan’s Gate for All” すべての人に、日本の扉を開けてください

~難民申請者を追放する『出入国管理及び難民認定法』の改悪に反対する教会共同声明~

 いま日本で生活している外国人(外国籍住民)は、日本の植民地支配に起因する在日コリアンをはじめ、1990年代を前後して急増した移住労働者や国際結婚移住女性、留学生や技能実習生など、300万人を超えます。日本の教会とキリスト者は、これまで外国人の人権保障と共生社会をめざして、NGOや弁護士団体と共に、外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定を、日本政府と国会に求めてきました。また昨年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにあって、政府から支援を受けられない難民申請者(約1万人)や超過滞在者(約8万人)の窮状を救う活動をしてきました。

 彼ら彼女らは、本国で迫害を受けて来日して難民申請をしましたが、難民として認定されず超過滞在となった人びとです。また、在留資格を失い入管施設に収容され、そこから仮放免されても、働くことが禁止され、住民登録がないため健康保険に入れず、困窮している人びとです。しかもコロナ感染拡大によって、家族も親族も同国出身者たちも失職して、仮放免者や超過滞在者たちを支えることができないという過酷な状況が現出し、今後、より深刻化することが予想されます。ところが、日本政府は今年2月19日、このような人びとの窮状を放置したまま、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改定案を閣議決定し、国会に提出しました。

 まず私たちが確認しなければならないことは、日本の難民受け入れ率は著しく低く、他国では認められるケースの難民申請が不認定とされている「難民鎖国:日本」の現実です(巻末の表1・表2)。このことは、国際社会の中でも劣悪な現状です。

 今回の政府案は、閉鎖的、排除的現状を改善するものとはほど遠く、次のような制度を設けようとしています。

a.難民申請の回数を2回までと限定

この新制度は、難民認定率が1%にも満たない日本の難民認定制度に問題があります。

申請回数を制限して難民申請3回目以降は強制送還とする政府改定案は、「庇護・在留を認めるべき者を適切に保護する」としたノン・ルフールマン原則、すなわち難民を、生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放、または送還してはならないとする国際的原則(難民条約第33条)に、明らかに違反します。

b.退去強制を拒否する難民申請者・超過滞在者に対して「強制送還拒否罪」

この10年間で、強制退去命令を受けた外国人のうち97%が出身国などに帰国しましたが、残り3%の外国人(約3,000人)は帰国を拒否しています。難民申請者は、迫害を受けた出身国に帰国できないが故に帰国を拒否し、難民申請をするのです。また超過滞在者の多くは、長年日本で働き、家族を形成し、日本で生まれ育った子どもたちがいます。

それにもかかわらず、強制退去命令という「行政罰」に加えて、新たに「刑事罰」を設けることは、刑事手続きで刑務所に送り、それが終わると入管施設に送り、そこでまた帰国を拒否すれば刑事手続きに付す、という悪循環を難民申請者・超過滞在者に強いるものであり、非人道的な加重の懲罰制度です。

c.入管施設での長期収容の代替措置として、「監理措置」と「仮放免逃亡罪」

在留資格を失った外国人に対する現在の入管収容制度は、司法審査がなく、全件収容主義であり、収容期間が無期限です。入管収容施設では、家族や友人との面会は30分ほどの時間制限がつき、持病があっても許可がなければ病院に通院することもできません。そのため、収容者の病死、ハンスト、餓死が続いています。

このような難民申請者・超過滞在者の長期収容に対しては、国連の拷問等禁止委員会が2007年と2013年に、自由権規約委員会が2014年に、人種差別撤廃委員会は2018年に懸念を表明し、日本政府へ是正勧告を出しています。そして国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は2020年8月22日、「日本においては庇護申請をしている個人に対して差別的な対応をとることが常態化している」として、収容期間が無期限であることなどは、日本が加盟している自由権規約第9条1項(恣意的な拘禁の禁止)に違反し、また、入管収容について司法審査が定められていないことは、自由権規約第9条4項(自由を奪われた者が裁判所で救済を受ける権利)に違反し、「法的根拠を欠く恣意的な拘禁に当たる」という意見書を採択しました。

日本政府の改定案は、こうした国際人権機関の懸念と勧告をまったく無視するものです。政府改定案では、司法審査も収容期間の上限も設けず、仮放免における保証人制度をより厳しく「監理措置」制度に移行させ、その上、「逃亡罪」を新設するというものです。

これらの新制度は、難民申請を続け、かろうじて強制送還を免れ、何とか生きのびてきた人びとを、これまで以上に身体的、精神的に追い詰め、締め出そうとするものです。問題の根本的解決は、「難民申請者・超過滞在者に対する退去強制手続きの適正化」(日本政府案)ではなく、「難民として保護すべき制度の適正化」(難民条約)にあるのです。

まず、難民認定率が1%にも満たない日本の難民認定制度は、国際人権基準に沿った制度に抜本的に改正されるべきです。また超過滞在者は、日本で安心して生活できる在留資格が保障されるべきです。

「寄留者を虐待したり、圧迫してはならない。あなたたちはエジプトの国で寄留者であったからである」(出エジプト記22章20節)。

「実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました」(エフェソの信徒への手紙2章14、15節前半)。

マイノリティ宣教センター

 






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