イエスはその人たちの信仰を見て、中風の人に、「子よ、あなたの罪は赦される」と言われた。
マルコ2章5節(参照箇所同書2章1〜12節)
人はいやされる以上に、まず救われなければならないことを明らかにされた出来事です。中風を病む人のいやしに先立って、主は罪の赦(ゆる)しを宣言されます。すべての人は、罪人であって赦しの対象です。健康であろうと病気であろと、幸福であろうと不幸であろうと人間としては罪人なのですから赦しを受けねばなりません。
中風の人に向かって、「あなたの罪は赦される」と言われるのは、病人である前に人間であることを主は認めておいでになるのです。そして赦しはその人の全存在を包むもので、しかも永遠の命に結ばれるのですから、生き死にを越えた出来事としてその身に起ります。いやしは、それに反してあくまでこの世のことであり、肉をもって生きている限りのことです。いかにいやされたとしても死ねば、そこまでのことです。いやされただけでは救われたことにはならないのです。
主が罪の赦しを宣言されたことは神への冒涜(ぼうとく)であると律法学者たちは非難し、これを境に主を十字架の道へと追いやることになります。