牧師にとっての守秘義務とは? 櫻井圀郎 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.週報に個人情報が無断で記載されることがあります。牧師にとっての守秘義務をどう考えればよいでしょうか。(50代・女性)

「個人情報」とは、氏名・住所・生年月日・電話番号・携帯番号・メールアドレスなど、個人を特定できる情報のことを言います。本来、個人情報は公示されていなければ意味のないもので、秘密にする性質のものではありません。

しかし、本人の望まない訪問販売や電話勧誘に利用されたり、ストーカー被害の元になったりすることが多く、個人情報の保護が求められ、個人情報保護法が制定されるに至っています。教会で信徒の個人情報を扱うという程度では個人情報保護法の適用はありませんが、その必要性を理解して、個人情報の保護に努めるべきでしょう。

ご質問は、転居などをした信徒の新住所や電話番号などを、無断で週報に掲載したということでしょうか。本人の願いや教会の決めごとを無視して掲載したのなら、債務不履行や不法行為になるでしょう。

しかし、「個人情報」のお尋ねながら、「守秘義務」を問題にしていますから、住所や電話番号などという「個人情報」ではなく、病気・入試不合格・失職・離婚などという「個人の秘密」のことが問題なのでしょうか。しばしば、「個人情報」と「個人の秘密」とは混同されているからです。

「個人の秘密」ということであれば、宗教の職にある牧師が職務上知り得た秘密を漏らしたことになり、刑法上の秘密漏示罪に当たり、民法上の不法行為になります。住所や電話番号などの個人情報でも、ストーカー被害・振り込め詐欺被害などとの関連では秘密という要素が強くなってきますから、注意が肝心です。

信徒の牧師の職務遂行に守秘義務は欠かせないものですが、何でも秘匿するだけではなく、本人の同意を得るとともに、きちんとしたルール(マニュアル)を作って、その場限りではない、一貫した取扱いを心がけたいものです。

さくらい・くにお 1947年、三重県生まれ。名古屋大学法学部卒業、同大学院博士課程(民法専攻)、東京基督神学校、米フラー神学大学大学院神学高等研究院(組織神学専攻)、高野山大学大学院(密教学専攻)を修了。日本長老教会神学教師、東京基督教大学特任教授。著書に『日本宣教と天皇制』『異教世界のキリスト教』(いずれもいのちのことば社)、『教会と宗教法人の法律』(キリスト新聞社)ほか多数。

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