自らの人生を責任をもって生きる指針
〈評者〉林田憲明
この本はウィーンの精神科医ヴィクトル・E・フランクルの提唱したロゴセラピーという心理療法を紹介しながら、「私は何のために生きているのだろうか」「どのように生きていけばいいのだろうか」という問いかけに対して、具体的な指針となるような答えを出そうと試みています。ともすれば哲学的で難解だと敬遠されがちなロゴセラピーを一般の人たちにもわかりやすく解説するために、各所に古今東西の昔話や逸話をちりばめ、中高生でも理解できる内容になっています。
本書は、人間にはどんな過酷な状況に陥ってもそれに打ち勝つ力があるはずだという根源的信頼から話が始まります。そして苦難を乗り越えるためには、時代や地域を超えた客観的な価値である・意味・を目標にすることが求められます。しかしその意味を実現するためには、自分を束縛している制約の鎖を断ち切ることも必要です。そのエネルギーとなるのが、心と体のほかに私たちに宿る精神です。健全な精神を鍛え維持することは、私たちが自らの人生を自由と責任をもって創り上げるためには必要なことだ、と本書は説いています。
著者の勝田氏はフランクルが弟子たちの中でも最も高く評価したエリザベート・ルーカスのもとで学び、日本人として初めてロゴセラピスト資格を取得しました。これを日本で普及させるために、2001年から入門ゼミナールを開始しています。(つづく)