宝の民が教会を成長させる 赤江弘之著『聖書信仰に基づく教会形成──西大寺キリスト教会の歩みを一例として』(ヨベル)

 

日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)の主任牧師、赤江弘之氏(75)による新刊『聖書信仰に基づく教会形成──西大寺キリスト教会の歩みを一例として』(ヨベル)が刊行された。

赤江弘之著『聖書信仰に基づく教会形成──西大寺キリスト教会の歩みを一例として』(ヨベル)

牧師として赴任した1972年、西大寺教会は礼拝出席20人ほどの、どこにでもある地方教会だった。それが今では200人を越える礼拝者、昨年献堂したばかりの500人規模の礼拝堂、2棟の教育館、幼児園から小中高校までのチャーチ・スクール、高齢者のための施設まで兼ね備えた大きな教会に成長した。その軌跡を牧師として体験してきた赤江氏が「恵みの終活」としてまとめたのが本書。

「第一部 聖書信仰の理念」は、福音派教会としての骨組みである聖書信仰を10頁強で確認する。「第二部 聖書信仰に基づく教会形成について」は、聖書的教会観をどのように具体的に適用し、展開してきたかが紹介される。

ただ、「第三部 私の教会形成の足跡」は、講演のアウトラインや「グローリア礼拝堂」(500人会堂)の建設資料などが主であることは残念。取材で肉づけすれば、もっと分かりやすく、読みごたえのあるものになっただろう。たとえば次の箇所など、詳しく読みたいと思う人は多いはずだ。

(3)理解に苦しむ人への対応
あることに固執し、常に異議を唱え、対処に困難で次々に問題を起こす人。
対応──重要な奉仕につかないようにし、すでにそのような立場にあるなら、公平な心掛けをしつつ時間をかけてその奉仕から引いていただく。
(4)分派活動への対応(分派の種類)
① 聖書の教えに反する人々の分派
対応──真理を曲げずに静かに教え、結果的に分派の人々が教会を去ることはやむをえないと考える。

しかし、本書の眼目は巻頭の「西大寺教会物語」。「人は城、人は石垣、人は堀」という武田信玄の言葉を引用するとおり、いくら聖書的に正しい教会形成を牧師がしようとしても、それに応える信仰的な信徒がいなければどうしようもない。その点、西大寺教会には「宝の民」が集まっていた。

日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)の主任牧師、赤江弘之氏

赤江氏が赴任する2年前の1970年、教会学校の夏期学校に参加した生徒の水死事故があり、こつこつ積み立てていた会堂資金はすべて慰謝料にあて、残りの半分を3年間にわたって返済するという状況で、教会は危急存亡の瀬戸際に立たされていた。また訴訟問題となり、牧師と信徒責任者に重過失致死罪の判決が下されたという。

後日、水難事故の引率責任者となられた信徒は、教会の重鎮としてあらゆる面で奉仕の先頭に立ち、サムエル幼児園の理事長を終生務めあげられました。そして、2017年5月新しく建てられたグローリア礼拝堂の献堂式でハレルヤコーラスを歌い、翌6月にはこの姉妹の新会堂第一回目の葬式が行われたのです。89歳を前にみごとな生涯を終えられました。(10頁)

また、「わたしの祈りは、……船と一緒に沈んでくれる船長が欲しいのです」と、着任早々の赤江氏に言った女性信徒。

この方は、数限りない試練をくぐりながら、牧師と一致して教会を支え、96歳まで現役で礼拝を守り通し抜かれました。前任牧師のある先生に、「この二人がいてくだされば、どんな試練にも耐えられる」と、言わしめたうちの一人の方でした。(11頁)

若い信徒の模範として尊敬されていた年配の男性役員がおられました。先に紹介した「この二人」のもう一人の方です。千人教会をビジョンに掲げて意気込む青年たちを、静かに温かく支える謙遜な方でした。……やがて、会堂建設の敷地購入にあたり、この信徒の決断が大きな方向性になりました。そして、830坪の農地を取得することになりました。「汝の口を大きく開けよ」とのみ声がこの時も響いていました。静かな一農夫であった方の信仰が皆を奮い立たせました。そして会堂建設委員長の重責を果たされたのです。(13~14頁)

あなたの教会にもこのような「宝の民」がいるのではないだろうか。

赤江弘之著
『聖書信仰に基づく教会形成──西大寺キリスト教会の歩みを一例として』
ヨベル
2018年10月1日初版発行
新書版・204頁
1000円(税別)

 






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