【日本YWCA】 若者が声を届け、その声が響く社会を目指して 能條桃子(NO YOUTH NO JAPAN)

U30世代と政治をつなぐコミュニティ「NO YOUTH NO JAPAN」。若者目線で発信する情報が同世代の共感を呼び、インスタグラムのフォロワー数は約7万4000人。現在、衆議院選挙に向けて若者の投票意識を喚起するさまざまなキャンペーンを展開しています。日本YWCAの機関紙8月号から、同団体代表の能條桃子さんのメッセージを転載します。

「U30世代が政治や社会を知って、スタンスを持って、行動する入り口をつくる」NO YOUTH NO JAPAN

低い20代の投票率、きっかけはデンマーク留学

2019年、21歳の大学3年生だった私は、デンマークに留学をしていた。デンマークでは多くの若い世代が投票に行き、選挙を楽しんでいた。その様子に感化されていた私は、その年の7月に日本で参議院選挙が実施されると知って、デンマークから日本のためにできることをしようと考えた。デンマークでは、選挙前、社会課題に対して「意識の高い・低い」に関わらず、家でも学校でも友人同士の会話でも頻繁に選挙に関する話がされており、日本でもこのような光景が広がれば、きっと投票率も上がるのではないか、そんな社会では社会変革のスピードが早いのではないか、という期待を持つようになっていたからである。

そして、日本の若い世代の投票率を上げたいと立ち上げたプロジェクトが「NO YOUTH NO JAPAN」。「若い世代なくして、これからの日本はない」という思いを込めての名称である。このプロジェクトは、インスタグラムなどを利用して選挙に関する分かりやすい情報を発信し、2週間で10代・20代中心にフォロワー1万5000人を集めた。しかし、実際の投票率の結果は30.96%であり、前回の選挙から下がる結果となった。選挙前に「投票に行こう」とバズるだけでは投票率は上がらないと痛感し、日常から政治や社会に興味を持つ人を増やそうと「NO YOUTH NO JAPAN」を団体化。現在、10代・20代の70名が所属している。

個人の「モヤモヤ」は社会の課題、解決するために政治がある

なぜ若い世代が政治に関心を持つことが重要なのか。それは政治が、若い世代が問題意識を持つ社会課題を解決するためのツールとなりうるからである。「若者は政治に無関心」と言われるが、「若年層の政治に対する関心」に関する各国比較調査では、投票率が高いスウェーデンと日本とでは約14%しか差がない。若い世代の政治への関心は一定程度あるのだ。また、新型コロナウイルスの感染拡大は大きな契機となったと思う。コロナ禍によって社会課題への関心、変わらない日本社会への問題意識を持つ若者が増えている。その「関心」が、投票やそのほかの政治参加といった「行動」につながることで、若い世代の声がより社会に届くようになる。

行動につなげるために、NO YOUTH NO JAPANではインスタグラムを運営することで、知って・スタンスを持って・行動するきっかけをつくることを目指している。「なぜジェンダー平等はまだ実現しないのだろうか」「LGBTQ+に対する差別的な言動が気になる」「最近暑くなっているし、気候変動は大丈夫なのだろうか」と感じているU30世代は多くいる。一人でモヤモヤと問題意識を持っているU30世代に対して、その問題を深く知り、自分の意見を持ち、行動することで、私たちが生きる社会は私たちがつくっていくことができる、と伝えることで仲間を増やしていきたいと考えている。

*内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年度)

多様な若者たちが集まり「生きたい社会」を目指して活動する

自分とみんなと次世代のために、社会には、社会運動が必要

社会運動や活動は、一見効率が悪く、無駄なようにも思われる。ソーシャル・ビジネスが流行る中で、また政治家や官僚になるという可能性がある中で、社会を良くする手段としてほとんどの人にとって重要なものとは見なされていない。

権力を持たない私たちは、静かでモノを言わない受動的な消費者・観客としての市民に成り下がっているのかもしれない。日本はこれまで経済成長を経て、自分だけ良ければそれでいい人が増え、社会に対する理想や倫理観よりも合理的な損得が重要視されてきたともいえる。

しかし、そんな社会に嫌気が差し、気候変動や格差を前に、社会の転換の必要性を感じている人も多いのではないだろうか。市場経済でこの社会のすべての問題は解決できない。また、人権や権利は、誰かが求め活動することで得てきたものであり、その恩恵をみんなが享受しているものでもある。次の世代に、少しでもマシな社会を残すために、そして、自分のことだけを考えるのではなく誰かと共有することに価値を置くことが「善く生きる」ことではないだろうか。

自分から楽しみ行動すれば、ワクワクの輪が広がる

社会運動や「社会を良くする」活動に熱中すると、活動を始める前には意識せずとも知っていた世間の当たり前の感覚が、いつの間にか分からなくなることがある。同時に、使命感ばかりに追われて、自分が本来何のためにやっているのか見失うことがある。社会や事象に対する怒りやもどかしさの積み重ねで、日々の暮らしや人間関係、これまでの社会の積み重ねに対する愛おしい気持ちを忘れてしまうことがある。

人が動くのは、危機感や怒りだけではない。人が動くのは、期待や希望などワクワクする気持ちでもあったりするものだ。危機感や怒りだけでは持続が難しい。仮想敵をつくり、モチベーションを担保する形では、真に「みんなにとって生きやすい社会」は実現しないからこそ、たまにはココロが躍るアイデアや理想を探してみたい。そんな思いでNO YOUTH NO JAPANは明るくポップなデザインと内容をお届けするように心掛けている。

能條桃子
 のうじょう・ももこ 1998年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中にデンマークに留学。2019年、政治の情報を分かりやすくまとめたインスタグラム「NO YOUTH NO JAPAN」を立ち上げ、2週間でフォロワー1万5000人を集める。同団体を法人化し、代表理事を務める。現在、慶應義塾大学大学院1年生。SNSなどを通して気候変動やジェンダーなど社会問題について意見を発信している。

写真提供/一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN

出典:公益財団法人日本YWCA機関紙『YWCA』8月号より転載


YWCAは、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。

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