NHK連続テレビ小説「エール」のキリスト教考証(4)薬師丸ひろ子さんなどにまつわる裏話 西原廉太(立教大学文学部長、立教学院副院長、キリスト教学校教育同盟理事長)

 

NHK連続テレビ小説「エール」(月~土、午前8:00総合ほか)の撮影中には、役者の皆さんともいろいろ言葉を交わすことがありました。

たとえば、NHK渋谷スタジオでの演技指導の際、控えで薬師丸ひろ子さんと光石研さんと3人で出番を待つという、何と表現してよいか分からない時間をしばし過ごしたのですが、その時に薬師丸さんは、「キリスト教のお祈りは、(自分が幼い頃に通っていた)日本基督教団・原宿教会付属原宿幼稚園時代以来だ」とおっしゃっていました。

光石さんはたいへん優しく謙虚な方で、ちょうど私が前夜に観た映画「パッチギ」(主演の沢尻エリカさんが逮捕された直後で、なぜかまた観たくなったのでした)の中で熱血社会科教師を演じられていたという話題で盛り上がりました。

関内家の三人姉妹で末っ子の梅役を演じている新津(にいつ)ちせさんは、アニメ「君の名は。」を作った新海誠(しんかい・まこと)監督のお嬢さんであり、「パプリカ」(NHK2020応援ソング、米津玄師作詞・作曲)を歌い踊る「Foorin(フーリン)」というグループの最年少メンバーであることを、なんと帰宅後、台本で確認して知りました。収録の待ち時間に子役の皆さんに、「みんなも将来有名になるといいね」などと軽口をたたいたことを恥じ入った次第です。何せ収録の翌12月に紅白歌合戦やレコード大賞に出て、すでに超有名だったのですから。

そのほか、関内家のセットにはキリスト教のアイテムが実はしっかり作り込んであるのですが、その一つに「扁額」(へんがく)があります。関内家はキリスト者家庭ということで、NHKさんから「何か良い言葉がないか」と依頼があり、「敬神愛人」を推薦しました。「神を愛し、神を敬い、人を愛せよ」というイエス・キリストの中心的な教えを表現したものです。今回、美術さんがたいへん立派な扁額を製作してくださり、実物を拝見して感激しました。収録終了後、可能であれば頂戴したいと本気で思ったくらいです。

今回、考証という仕事に携わったおかげで、NHKさんがいかに緻密に、本番の映像にはほとんど映りもしないような細部に至るまでこだわりを持って誠実に制作されているかを知り、感銘を受けると同時に、多くのことを学ばせていただきました。良い機会を与えてくださったことに感謝しています。私はまた第16、17週あたりからキリスト教考証のお手伝いをさせていただいています。ぜひこれからも「エール」をお楽しみいただければ幸いです。

西原廉太(にしはら・れんた) 1962年、京都府生まれ。87年、京都大学工学部金属工学科卒業、91年まで日本聖公会中部教区名古屋学生センター主事、94年、聖公会神学院神学部卒業、95年、立教大学大学院文学研究科組織神学専攻修士課程修了、日本聖公会執事、98年、立教大学文学部キリスト教学科専任講師、2000年、助教授、07年、教授。博士(神学・関西学院大学)。専門はアングリカニズム(英国宗教改革神学)、エキュメニカル神学。日本聖公会中部教区司祭、世界教会協議会(WCC)中央委員を務める。

 






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