信仰は「継承」できるものではありません。【聖書からよもやま話176】

主の御名をあがめます。

皆様いかがお過ごしでしょうか。MAROです。
今日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

毎回、新旧約聖書全1189章からランダムに選ばれた章を読んで、僕の心に浮かんだ事柄を、ざっくばらんに話してみようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、  士師記の2章です。それではよろしくどうぞ。

◆士師記 2章10〜11節

そして彼らの後に、主を知らず、主がイスラエルのために行われたわざも知らない、別の世代が起こった。すると、イスラエルの子らは主の目に悪であることを行い、もろもろのバアルに仕えた。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

モーセの後を継いでイスラエルの指導者となったヨシュアが亡くなり、ヨシュアと同世代の人たちも亡くなると、残された世代の人たちは神様から離れて、別の神々を拝むようになってしまいました。ヨシュアの世代までは自分の目と体で神様の奇跡や助けを経験していましたが、その後の世代はそれを伝え聞いただけで、自分でそれを体験していませんでした。

世代交代の難しさを思わされます。会社なんかでも、創業者世代の人が亡くなったり引退したりすると次第に創業時の理念が失われてゆくということは多々あるようです。どんな分野においても、何かを始める人には「劇的な経験」や「決定的な転機」といったものがあるものです。しかし、それを引き継ぐ二代目三代目には必ずしもそれがありません。すると次第に「世の中の空気を読んで」当初の理念が失われていってしまうということになります。
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キリスト教では、クリスチャンの子として生まれても自動的にクリスチャンになるということはありません。教派によっては幼児洗礼が行われたりもしますが、その幼児洗礼も成長した後に堅信礼や信仰告白式で、自分の口で「信じます」という意思表示をしてはじめて真に有効なものとして認められます。つまりキリスト教では「親の信仰を継承する」ということを認めていないんです。信仰はあくまで自分で聖書や神様と出会って成立するものであって、誰かから受け継げるものではないんです。クリスチャンの子であっても孫であっても、神様は両親やそのまた両親の信仰とは無関係に、それぞれ自分個人の「劇的な経験」や「決定的な転機」を要求します。なぜならそれがなければ世代を経るに従って、このイスラエルの民のように信仰が薄まっていってしまうからです。親から子へ、知識は継承できても体験は継承できません。そして信仰は知識によって至るものではなく体験によって至るものです。

もちろん親となったクリスチャンが自分の子にも自分と同じ信仰を持って欲しいと願うのは当然ですし、そうあるべきです。しかし、親がどんなにその子を愛したとしても自分の信仰をその子に引き継がせることはできません。その子が信仰に至るためにはその子自身が個人的に経験や転機を得る必要があり、そのように至った信仰は「親から継承されたもの」ではなく、「その子自身に与えられた新たな信仰」です。親と同じ信仰を子が持った時、言葉上は「信仰が継承された!」と喜ぶこともありますが、厳密にはそれは継承されたのではなく、親の信仰と子の信仰は互いに独立したものなんです。

神様は「君の親が私を信じているから、君のことも救うね」なんて言ってくれる方ではありません。そうではなく「君の親が私を信じているかどうかは関係ない。今、君が私を信じるかどうか。それがすべてだよ」と聖書を通して迫る方です。信仰は家族単位のものではなく、どこまでも個人単位のものなんです。

それではまた明日。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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