オウム事件でキリスト教会がなすべきこと 和賀真也牧師に聞く

 

オウム真理教による一連の事件で先月6日、元教団代表の松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚をはじめとする7人、続いて26日には残る6人も死刑執行された。日本中を震撼(しんかん)させた事件から二十数年。1カ月に13人が処刑されるという異例の事態で、一区切りを迎えることとなった。

統一協会を中心としたカルト集団からの脱会支援をしているエクレシア会代表の和賀真也氏(セブンスデー・アドベンチスト教会名誉牧師)に話を聞いた。

和賀真也氏(写真:セブンスデー・アドベンチスト教会提供)

オウム真理教と聞いてまず思い浮かぶのが、教祖とされる松本智津夫が胡坐(あぐら)をかいたまま宙に浮いている「空中浮遊」の写真。このようなイメージが著書やマスコミを通じて発信され、現実を超えたスピリチュアルな世界を模索していた若者たちの目に触れたのがきっかけとなって、教団は拡大していった。実際、13人の処刑された元死刑囚のうち、実に10人がそうした経緯で入信している。松本が自身を神格化し、信仰の対象としたことで、それに追随した12人が死刑に処せられたのだ。

「人が人の上に立つことは、大きなリスクが伴う。今回、首謀者である松本と信者たちが同じ量刑であったことについては、法に則ってのことだから、宗教者としては何も言える立場にはない。しかし、このようになる前にできることがあったのではないかと思います。

宗教者の中には『オウムは宗教ですらない』という見方もあるようですが、実際には国から宗教法人として認可されていたのですから、一般からは宗教界の中で起こった事件と見なされるでしょう。この日本の宗教集団の恐るべき危険性に直面して、宗教界内の自浄能力を高める必要は大いにあるのではないでしょうか。

『自分たちはそんな集団と関係ない。正規の宗教団体だ』と言って、自分たちの集団の中だけに閉じこもって過ごすようなことがあれば、『それでも真の宗教者なのか』と私は思います。こうしたカルト問題に対しては、まずは宗教界がどのように認識し、対応していたのかが気になるところです」

とはいえ、和賀氏がカルトからの救出活動をしてきて励まされたのは、教派を超えたキリスト教界の献身的な働きかけがあったことだという。宗教者として責任ある立場にいる牧師や神父らが実践的かつ具体的に行動を起こし、多くの人々を救いへと導いてきたのだ。

「人の魂に変化や変革を呼び起こすのは、その魂にどのようなメッセージを届けるかで方向づけられていきます。提示されたメッセージを当事者が十分に検証できる安全な環境も必要とされています。動揺や迷い、恐怖や困難、不安などから守られ、なおかつ人権と人格が尊重され、安心できる24時間体制の環境があることも必要ではないでしょうか。

こうしたカルト問題への接し方を心得た人材などを整えて、正面から取り組むことが、本来の宗教の役割だと思います。それは、権力による取り締まりや刑罰を加えること以上に、重要で神聖な働きです。

オウムに限らず、カルトに足を踏み入れてしまう人は、真面目に生き方を模索している人が多い。彼らを危険視するのではなく、むしろその心に接近し、愛をもって冷静に根気よく真実を伝えることが必要なのではないでしょうか。

キリストがこの世に来られたのは、滅びゆく魂を救うためでした。一人のキリスト者として、私たちもキリストに倣(なら)いたいと思います。イエス様は天にいらして、この地上をご覧になり、私たちを『汚れたもの』として断罪し、差別したでしょうか。そうではなく、イエス様は天からこの世に降りてきて、私たちを救ってくださったのです。私たちも、滅びそうな魂にイエス様の愛を届けたいですね」

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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