日本聖書協会、「聖書協会クリスマス礼拝」を開催 キリストの愛に生かされることによって希望が生まれる  

日本聖書協会主催による「聖書協会クリスマス礼拝」が6日、日本基督教団・銀座教会(東京都千代田区)で開催された。同時に聖書事業功労者賞の授賞式も執り行われた。

同協会のクリスマス礼拝は、毎年12月上旬に、キリスト教界関係や、同協会の後援会員を招いて行われてきたが、今年はコロナ禍の状況を鑑み、理事、評議員、職員のみの関係者のみが参列する非公開方式が採られた。

礼拝はコロナウイルス感染防止のため、限られた人数で行われた=6日、銀座教会(東京都中央区)で。

礼拝は、同協会の理事を務める小海光(こかい・ひかり)氏(ウェスレー合同メソジスト教会牧師)の聖書朗読から始まった。朗読箇所は、ルカによる福音書2章8~16節。次いで、副理事長の菊地功(きくち・いさお)大司教(カトリック東京大司教区)によって開会の祈りがささげられた。

その後、理事長の大宮溥(おおみや・ひろし)氏が登壇し、「飼い葉桶の救い主」と題してクリスマス・メッセージを語った。大宮氏は、1996年に同協会の理事長に就任して以来、20年以上にわたって同協会を導いてきたが、今期をもって理事長職を退かれる。在任中は、2000年の大聖書展、09年の日本プロテスタント宣教150周年記念大会などキリスト教会の歴史的な節目となるイベントを成功させると同時に、日本の教会にエキュメニカル運動を根付かせる働きにも尽力してきた。理事長として最後となるクリスマス・メッセージでは、聖書の朗読箇所を紐解きながら、次のように話した。

「聖書は、神に背いて迷い出た人間を、神がご自分の元に連れ帰るために御子イエス・キリストをこの世に遣わされたと言っています。神との関係から切り離されていた人間は、イエス・キリストが人間としてこの世に生まれ、死んで蘇(よみがえ)られたことによって、地上と天は直結され、我々は神と交わり、神の子として生きることができ、天に戸籍を持つ者とされました」

日本聖書協会理事長の大宮溥氏。

また、神学校時代、毎日が霊と肉との戦場だったことを明かした。そんな鬱々(うつうつ)とする中で、嵐の中に投げ込まれ、頭に神の怒りの雷が落ち、焼け焦げる夢を見たことで、罪から抜け出ることができたという。そして、自分の罪のために十字架にかかり、復活された神の栄光をあらわすために生きられるようになったことを証し、最後にこう結んだ。

「神と人間が敵対関係にあった時、和解する力は人間側にはありませんでした。イエス・キリストが人間となって和解の働きをしてくださり、神と人間の間に平和が立てられました。ここに注がれる愛が聖霊です。2020年のクリスマスを前に、私たちの現実は困難に覆われています。しかし、そういう中にあっても、キリストの愛に生かされることによって希望を持って進むことができるのです。『地には平和、御心に適(かな)う人にあれ』この祝福をいただき、新しい年に向かいたいと思います」

大宮氏の祝祷の後、聖書事業功労者表彰式が行われた。31回目となる今回は、カトリック大阪大司教区司祭の和田幹男(わだ・みきお)氏が受賞した。

和田氏は、1938年、神戸市生まれ。66年に教皇パウロ6世により司祭叙階。英知大学、同志社大学、東京カトリック神学院などで教鞭を執り、2005年にカトリック箕面教会主任司祭に就任、13年からはカトリック関目教会主任司祭、20年から尼崎市にあるドムスガラシアのチャプレン。また、1972~87年、新共同訳聖書旧約聖書翻訳委員(編集委員兼任)、2010~18年、聖書協会新共同訳検討委員を務めた。『聖書 新共同訳』と『聖書 聖書協会共同訳』この2つの聖書の翻訳に関わったのは和田氏ただ一人で、両聖書の翻訳・編集に貢献し、多年にわたる聖書理解の普及に努めたことを覚えての受賞となった。

和田幹男氏に代わって、大宮理事長より表彰状を受け取る東京神学院院長の松浦信行氏。

この日、怪我(けが)で入院中の和田氏に代わって、東京神学院院長の松浦信行(まつうら・のぶゆき)氏が表彰状を受け取り、メッセージを代読した。「新共同訳」の翻訳で、イエスかイエズスかの表記で議論になった時、「プロテスタント教会の人々が、イエスをイエズスと呼ぶ苦しみを味わうよりも、カトリック教会の我々がイエスを受け入れる苦しみを担おうではありませんか」と呼びかけたことを振り返り、聖書翻訳の働きを次のように伝えた。

「聖書をカトリックとプロテスタントが共同で翻訳することによって、祈りにおけるキリスト教徒の一致が深まり、教会一致のための聖書の役割を深く感じます。『聖書 聖書協会共同訳』が、『聖書 新共同訳』と同じように、カトリックとプロテスタントの垣根を超えて、さらに用いられていくことを願ってやみません」

この日のクリスマス礼拝については、待降節(11月29日)以降に日本聖書協会YouTubeチャンネルにおいて動画配信される。

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