カトリック作家・清涼院流水さんインタビュー(1) キリスト教が信仰の選択肢になるような世の中にしたい

聖書の入門書『どろどろの聖書』(朝日新聞出版)を昨年秋に出版し、カトリック作家としての地位を固めつつある清涼院流水(せいりょういん・りゅうすい)さん。15日に開催される「いのり☆フェスティバル」(略称=いのフェス)では、酒場本&英語本著者の藤枝暁生(ふじえだ・あきお)さんと、「生涯を通じて学び続ける意味とは?」というテーマで対談することが決まっている。いのフェス開催を前に、新しく出版される本のことや、ご自身の信仰について話を聞いた。

ーーキリスト教の入門書を書こうと思ったきっかけを教えてください。

僕が読みたい聖書のガイド本がなかったというのが1番の理由です。聖書については、さまざまなガイド本が出ていますが、そのほとんどは学者や研究者の方が書かれていて専門的になり過ぎています。たとえば、聖句を引用するときには、聖書から一言一句そのまま引用されていますが、この本では、自分なりに意味を咀嚼(そしゃく)して、現代人にわかりやすい言葉に置き換えています。これは、小説家だから許されることで、アカデミックな世界ではできないことです。

もう一つは、キリスト教をもっと日本人に知ってほしいという思いからです。日本には、潜在的クリスチャンは多くいても、実際のクリスチャンは人口の1パーセント未満です。でもそれは、キリスト教を伝える手段が今まで存在していなかっただけだと僕は思っていて、「キリスト教はこういうものだ」ということがきちんと日本人に浸透したら、10パーセントは軽く超えるはずです。何を信仰しても個人の自由ですが、キリスト教が信仰の選択肢になるような世の中にしたいと思っています。

ーーあの長い聖書を、新書版の薄さにまとめられたのは驚きです。

できるだけ読者のイメージを喚起するようなワードチョイスをして、そこから物語のイメージが膨らむように工夫しています。氷山の一角というように、水面の上の氷山を見せることでその下にあるものを感じてもらえるような書き方を意図的にしているので、それがうまくいったのではないかなと思っています。新書の平均的なページ数ですが、聖書と同じくらいの分量の思いを込めています。

ーー旧約聖書をよく知らない人にとっては結構ショッキングな話も出てきますね。

洒落にならないような男尊女卑とかあって、自分でも書きながら「これは残酷で酷い」と思いましたが、聖書に書いてある以上は意味があるはずだと、読者がドン引きするような場面もそのまま書くようにしました。旧約聖書は、クリスチャンを長くやっている人でも馴染みが薄いので、この本を読んでその内容を知ってもらえたら嬉しいです。ノンクリスチャンにキリスト教のことを知ってほしくて書いた本ですが、クリスチャンが聖書を見つめ直すきっかけになれば、とも思っています。

ーープロテスタントでは読まれない「外典」の話もあって興味深かったです。

プロテスタントの方が嫌がるのを覚悟のうえで、カトリック教会が「旧約聖書続編」として収録しているものにも印象的なエピソードがあることを知ってほしくてあえて入れました。教会に行く前によく読んでいた聖書は、新改訳のバイリンガル聖書で、旧約のマラキ書が終わるとすぐに新約のマタイの福音書が始まるというこの唐突さに違和感があったのですが、カトリックを学ぶ際に続編を読んで、はじめて腑に落ちました。ユディト記やマカバイ記では、旧約聖書で描かれていない後の歴史ことが書かれていますから。

ーー続編が出版されると聞きましたが。

今年12月に『どろどろのキリスト教』というタイトルで同じ出版社から2冊目が出ます。『どろどろの聖書』では、アブラハムから教会誕生までを描き、キリスト教が始まる前に終わっているので、次回作は、キリスト教の誕生から現在までの2千年間を、愛憎劇をキーワードにして50の物語で紹介しています。これを読めば、初代キリスト教会がどんな感じだったのか、ローマ帝国の中で教会がどう広がっていったのかなど、キリスト教の全歴史が分かるようになっています。これまで聖書やキリスト教のことが分からなかった人が、エンタメとして楽しみながら、聖書やキリスト教を理解できる2冊の本ができたと思っています。(2に続く)

 せいりょういん・りゅうすい 1974年兵庫県生まれ。作家、英訳者。「The BBB(作家の英語圏進出プロジェクト)」編集長。京都大学在学中、『コズミック』(講談社)で第2回メフィスト賞を受賞。以降、『ジョーカー』『カーニバル』『彩紋家事件』と続くJDC(日本探偵倶楽部)シリーズなど、型破りのミステリー作品を多数発表。TOEICテストで満点を5回獲得、英語の勉強会を主催し、『社会人英語部の衝撃―TOEICテスト300点集団から900点集団へと変貌を遂げた大人たちの戦いの記録』など英語学習本も多数。2018年に『純忠―日本で最初にキリシタン大名になった男』と『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』を同時刊行。2020年7月20日に受洗し、カトリック信徒となる。

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