日本キリスト伝道会(森稔会長、深谷春男委員長)が主催する「第52回 日本伝道の幻を語る会」が16日、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」を使用したオンラインで開催された。今回のテーマは「若者と共に日本伝道のビジョンを!」。鳩ヶ谷福音自由教会牧師の大嶋重徳(おおしま・しげのり)氏と、東京神学大学教授の中野実(なかの・みのる)氏が講演を行った。
前半には大嶋氏が登壇し、講演Ⅰと青年大会のメッセージを担当した。元KGK総主事でもある大嶋氏は、若者の心に語りかける愛の伝道者として絶大な支持を集める。講演Ⅰでは、「若者と生きる教会」をテーマに、伝道者の書12章1節にある「あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ。わざわいの日が来ないうち」(新改訳2007)を中心に据え、20年間にわたるKGKの活動で出会った若者たちの実像を伝えながら、教会が今取り組むべき課題について語った。
KGKが行ったアンケートによると、ノンクリスチャンの45パーセントがキリスト教会に関心を持っており、このことは若者伝道が決して暗くないことを示している。しかし、クリスチャンホームの若者にとって教会は、自分の大切な友だちを連れて行くにはリスクのある場所になってしまっているという。このような現実を踏まえ、彼らがノンクリスチャンの友だちに創造者なる神を知らせ、伝えていくために、教会が取り組むべき課題として3つのことを挙げた。
1つ目は、聖書の言葉を分かち合い、彼らの人生に着地させていくこと、2つ目は、信仰の柱となる聖書の教理をきちんと語ること、3つ目は、この人のいる教会だったら、自分の大事な友だちを呼べるなと思えるような存在になることだ。特に3つ目は、立派な話などする必要はなく、常に側にいて、祈っているということが伝われば、教会が好きなり、伝道する力と励ましを得ていく青年に変えられると話す。
また、自分たちも若い頃、教会での奉仕で失敗し、迷惑をかけながらも先輩たちに許されてきたように、若い人たちの失敗を見守ることの大切さを語った。教会と若い人は、一つの平衡関係にあり、「あなたの若い日に創造者を覚えよ」は、いつの時代にも青年期を送っている教会に語られている言葉であることを伝えた。
若者を育てるには時間がかかる───大嶋氏は、若者を呼び寄せる手段や効果的な方法はないとしたうえで、若者宣教は忍耐を持って付き合う覚悟が必要であること、そこには、時間だけでなく、お金も体力もいることを伝えた。さらに、時間をかけたら信仰を持つかといえばそんなことは決してないと話し、若者宣教では、「受ける者よりも与える者が幸い」というイエス様の言葉を生きることになると力を込めた。そして、次のように締めくくった。
「一過性のイベントは、企画したりするための特別な賜物が必要ですが、今日話したことは、若者と共に生きると心を定めて、若者たちが信仰をしっかり持ち、自分たちの大切な友だちを教会に連れて来ることができるまで育てていくという決意をすることです。若者が、自分の教会をとても愛し、とても誇りに思い、自分の悩んだ友人を連れて来たいと思う。その中で伝道の火が神様によって点けられる。若者に点けられたその火を、私たちが祈りながら、支えていく。そのような教会になることが、私たちが若者と共に見ていくビジョンとなります」
後半は、中野氏が登壇し、講演Ⅱと宣教大会での説教を担当した。中野氏は、福音の本質を鋭くえぐりつつ若者と共に明日の教会を建てあげるべく取り組む、新進気鋭の神学者。講演Ⅱでは、自分自身の経験を踏まえながら、「聖書がリアルに迫る」というテーマで語った。
牧師の家庭に3人兄弟の末っ子として生まれた中野氏は、人間的にいろいろな課題を抱える父親に反発し、牧師にだけは絶対にならないと心に決めていた。ところが、中高生の頃、地域の教会キャンプに参加して、教会に対する思いが変わっていき、高校3年の頃に、ある聖書の御言葉によって、自分が変えられる大きな経験をした。
それは、ローマの信徒への手紙14章4節で、自分を慰めるため、正当化するために聖書を読んでいたのに、自分の思い通りにならない神様を感じ取ったという。「今から思い起こすと、その時から、自覚的な信仰者となったのだと思います」と述べ、まさしく聖書の言葉によってが、自分が変えられたことを証した。
教会は、その聖書の力をリアルに届ける働きをするために建てられてたものだと述べ、そこには、いろいろな世代の人が利害関係を超えて、聖書が証するイエス・キリストを中心に集められている場所だと語った。とても不思議なところで、当たり前の場所でなく、他にはない特別な何かがある場所であることを、若者たちに気づいて欲しいと呼びかけた。
そして、若者と一緒にビジョンを見るために与えられた「だから、誰でもキリストにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去り、まさに新しいものが生じたのです。これらはすべて神から出ています。神はキリストを通して私たちをご自分と和解させ、また、和解の務めを私たちに授けてくださいました」(コリント人への手紙二 5章17~18節=聖書協会共同訳)を引用し、最後に次のように述べた。
「誰でもキリストにあるならその人は新しく作られた存在。そこに神の新しい業が、私たち一人一人において始まっている。それは、世界を神の御心にかなうやり方で創造し直す神様の業に私たちも用いられていく、そんなビジョンです。それが神の民とされた教会に与えられているのビジョンです。どんなに危機的な状況にあったとしても、世界を新しく作り直す、神の業が進めれられている、そのために私たちが用いられる大きなビジョンを共に見る私たち教会でありたいと思います」