「未来を考える有志の会」に司教団が回答 「カトリック新聞」休止の決定変わらず

2025年3月をもって紙媒体での発行を休止すると発表した「カトリック新聞」について、7月16日から19日にかけて行われた臨時司教総会に向け、再審議を求めていた「カトリックの未来を考える会有志の会」(鈴木みどり代表)が、司教団からの最終的な回答が得られたことを公表した。

同会は今年3月、「カトリックの『今と未来』 私の信仰の『今と未来』を考えるためのアンケート」を行い、国内カトリックの全司教、全修道会、教会宛てに1700通を郵送。インターネットも介して750件以上の回答を得た。その結果をふまえた「陳情書」を6月の常任司教委員会前に、カトリック司教協議会会長である菊地功氏(カトリック東京大司教)へ提出していた。

陳情書の中で要望していたのは以下の3点。「現代日本カトリックにおける紙媒体カトリック新聞の『存在意義とそのニーズ』を再認識し、2025年3月での週刊カトリック新聞休刊を再考していただきたい。(ネット媒体との共存を進める)」「代替案としては、発行回数を隔週に減らし料金設定も変更する等。同時にその存在意義の再確認のもと、購読者を増やすための運動を司祭・信徒共同で強力に行っていく。またその公的価値や福音宣教の観点から読者購読料のみに頼るのではなく、公的に支える方向も考える」「現在の日本カトリックが抱えている問題 (経済的問題、人的資源の問題等についても可能な限り透明性を持たせ、修道者や信徒も共にカトリック全体で考え、改善に向かって協働できるよう(シノダリィテイ)計らっていただきたい」

これに対し菊地大司教は7月26日、臨時司教総会において「司教のみで話し合い」、「あらためて決定に至ったこれまでの経緯を説明した上で、司教団としての意見をとりまとめ」たとして、「皆様のご要望にはお答えすることが難しい」と回答した。理由として挙げたのは、「現状の経営状況を考慮に入れ、今後とも、インターネットを中心にした上で、月に一度程度の紙媒体も活用して、できる限り広くカトリック教会の情報を伝える手段への転換を選択したこと」「過去数十年にわたって、営業担当や担当部長などが全国を巡り、キャンペーンなどを通じて定期購読者数増加に努めたが、残念ながら定期購読者数が確実に減少し続けていること」「記者の取材努力による報道内容が今以上に広く多くの読者に伝わるためにも、インターネットの活用がふさわしいと判断したこと」の3点。「そのほかにも考慮した事由は多々ありますが、それらについては、今後、広報担当司教を中心に新しい体制の構築を検討する中で、随時皆さまにお知らせして参ります」と補足している。

これを受けて「有志の会」代表の鈴木さんは8月6日、見解を発表。「残念ながら、公式の発表では、7月の臨時総会ではカトリック新聞に関する議題は一切なかった」「陳情書にまとめた皆さまからの訴えは、総会では再審議されず、公の記録に残ることもありませんでした。そのこと自体が、まず非常に残念」とした上で、挙げられた3点の理由についても3月に司教協議会が出した方針から「何ら進展はなく」、「陳情書」に込めた気持ちには「耳を傾けていただけなかった」「週刊カトリック新聞を『なめるように読んでいる』と病床から熱い思いを送ってくださった方々や、Web環境になく、紙媒体のカトリック新聞を心の糧にしているという多くの観想修道会や教会に行けない方々の思いを汲み取っていただけなかったという現実に、『シノダリティ』は一体どこに行ったのかという思いがよぎります」と落胆の色をにじませた。

8月11日付「カトリック新聞」に掲載された第1回臨時司教総会の「報告事項」にも、この件についての言及はなく、会議内で検討された形跡は見当たらない。鈴木さんは司教団の決定を「神の計らい」と受け止めつつ、「司教協議会の決定に対して信徒や修道者・司祭が疑問を呈し、様々な行動を行ったことは、無駄ではなかった」「多くの人がカトリックの未来、自分の信仰、自分の生き方を再考する一つのきっかけにはなった」とし、今後も行動を通して出会った「心ある方々」と「共に祈りあいながら歩んでいきたい」と前向きな姿勢を示している。

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