日本バプテスト連盟性差別問題特別委員会は7月8日、「繰り返される沖縄米兵の性暴力事件を憂い、抗議する声明」を、マシュー・ドルボ在沖縄米国総領事館総領事、岸田文雄首相、上川陽子外務相に宛てて発出した。
声明は、沖縄で繰り返される性暴力は米兵によるものであるが、事件後の対応などから、「暴力が繰り返されてしまう根深い要因」が見えてくると指摘。それは、「沖縄の性暴力被害者や沖縄で暮らす人々を大切にしようとしない政府の姿」であるとし、「事件の情報を現場の沖縄県に伝えず沖縄をないがしろにしながら、『被害者のプライバシーに配慮した』という名目で被害者を盾にし、自らの身を隠し責任を放棄することはあってはならない」「敢えて、沖縄県に情報を隠したことは、沖縄軽視に加え沖縄の自治への冒涜であり、いのちと尊厳が傷付けられる性暴力事件さえ、政治利用するという欺瞞に満ちた政府の在り方を示してい」ると訴えた。
声明の全文は以下の通り。
在沖縄米国総領事館総領事 マシュー・ドルボ 様
内閣総理大臣 岸田文雄 様
外務大臣 上川陽子 様
繰り返される沖縄米兵の性暴力事件を憂い、抗議する声明
沖縄に於ける米兵性暴力事件の被害者の痛みを憂い、魂を殺す性暴力に抗議します。被害を受けられたお一人おひとりの痛みと苦しみを想い、守りと支えをお祈りします。
度重なる米兵による性暴力、この半年間明るみに出されたものだけでも5件を数えます。何故、沖縄で暴力が繰り返されるのでしょうか。1945年、米軍の沖縄島上陸以来、地域住民、男女を問わない性暴力は死を伴うことも多々ありました。住民自ら性暴力に対峙せざるを得ない現実が、今も続いています。安保条約、それに伴う地位協定の改定がない限り、沖縄県民に向けられる構造的な暴力や差別の解消は困難です。
今回、報道によれば、今年5 月に性的暴行をしようとして女性にけがをさせた事件が起こり、那覇地検は米兵を不同意性交致傷の罪で6月17日に起訴しました。外務省の外務次官は、6月12日に駐日大使に再発防止を申し入れを行いましたが、沖縄県には情報を伝えず、政府が県に連絡したのは事件発生が明らかになった6月28日のことでした。
また、昨年12月に米兵が16才未満の少女を誘拐し、性的暴行を加えた事件も起こっています。この米兵は、3月27日に起訴され、外務次官は起訴当日に駐日大使に再発防止を申し入れましたが、政府が沖縄県に事件の内容を伝えたのは、問い合わせを受けた6月25日ということです。迅速な伝達で、次の被害を防ぐことも可能だったはずです。
なお、上川外務大臣は6月28日の記者会見で、政府が沖縄県に速やかに情報を伝えなかった理由について、「捜査当局は関係者のプライバシーや捜査、公判への影響の有無などを判断した上で、公表するか否か判断した。外務省としてもその判断を踏まえて対応した」と、述べました。ちなみに6月17日は沖縄県議会選挙で、この選挙で知事を支える与党は大敗しました。
沖縄で繰り返される性暴力は、米兵によるものです。しかし、事件後の対応などから、暴力が繰り返されてしまう根深い要因が見えてきます。それは、沖縄の性暴力被害者や沖縄で暮らす人々を大切にしようとしない政府の姿です。情報は力と言われます。事件の情報を現場の沖縄県に伝えず沖縄をないがしろにしながら、「被害者のプライバシーに配慮した」という名目で被害者を盾にし、自らの身を隠し責任を放棄することはあってはならないことです。本音では被害者の痛みや苦しみに思いを馳せることもなく、事件をよくある事と軽く捉えているのではないでしょうか。情報共有は、相手を大切な存在とみなすことの表れであると思います。敢えて、沖縄県に情報を隠したことは、沖縄軽視に加え沖縄の自治への冒涜であり、いのちと尊厳が傷付けられる性暴力事件さえ、政治利用するという欺瞞に満ちた政府の在り方を示しています。
私たちは、3つのことを要請し、祈ります。
1.性暴力被害者に米兵を含む米軍が、真摯な謝罪と必要な補償を行うこと。
2 .日本政府は米軍による事件・事故を全て明らかにし、沖縄をはじめ日本で暮らす人々の知る権利を保障し、個人の尊厳と幸福に生きる権利を重んじ守ること。
3.いのちを脅かし、環境を破壊する戦争の拒否。基地や軍隊は要りません。私たちは、沖縄で繰り返されるあらゆる暴力に抗議し、いのちと平和を求めます。
2024年7月8日
日本バプテスト連盟性差別問題特別委員会