映画「僕はイエス様が嫌い」が14日、第3回マカオ国際映画祭(8~14日)で審査員特別賞に選ばれた。日本での公開は来年の予定。
監督の奥山大史(ひろし)さん(22)は、スペインで9月に開催された第66回サンセバスチャン国際映画祭では、日本人としては20年ぶり、二人目となる最優秀新人監督賞を受賞した。1996年生まれの奥山さんは、同映画祭において史上最年少受賞者となる。また、先月にスウェーデンで開催された第29回ストックホルム国際映画祭でも最優秀撮影賞を受賞。
あらすじは次のとおり。少年ユラは祖母と一緒に暮らすため、東京から雪深い地方のミッション系小学校へ転校してきた。新しい同級生と行う礼拝なるものに戸惑いを感じつつも、次第にその習慣や友だちにも慣れていった。ある日、お祈りをするユラの目の前に、とても小さなイエス様が現れる。そのイエス様にお願いしたことは、たとえば親友ができるなど、必ず叶(かな)えられ、ユラはイエス様の持つ力をだんだん信じるようになっていく……。
脚本、撮影、編集も手がけた奥山さんは東京都出身。キリスト教主義の青山学院大学4年だった今年、卒業制作として撮影した長編デビュー作だ。大学卒業後、今は大手広告会社に勤務している。
サンセバスチャン国際映画祭は、ヨーロッパでは「世界四大映画祭」と呼ばれ、カンヌ、ベルリン、ベネチアに次ぐ重要な映画祭。カトリックの国スペインで「僕はイエス様が嫌い」という映画がどう受け止められるか注目が集まったが、宗教や死生観が関わる重みのあるテーマをユーモア込めて詩的に描き、予想を超えた感動を与えたことが評価された。奥山さんは、「上映してもらったあとの拍手と歓声を一生忘れることはありません」と語った。
「『僕はイエス様が嫌い』は、若くして亡くなった友達に向けて作った映画です。その友達のお母さんにこの映画を初めて観てもらったとき言われたのは、『忘れないでもらえることがいちばん嬉しい』という言葉でした。これからも僕は、忘れてはいけないことや、忘れられない感情を映画に込めていきたいです」
サンセバスチャン国際映画祭の審査委員長を務めたデンマークの映画プロデューサー、カトリーン・ポルス氏は選考理由をこう語る。
「この作品は、真っ向からリスキーなテーマを取り上げて、作ること自体がギャンブルだったと思います。それでも、子どもを使った純粋で綺麗なディレクションがなされていました」
また、ストックホルム国際映画祭ディレクターのギト・シュニウス氏は次のように評価した。
「撮影の構図やカット割り、カメラワークに魅了され、この映画に一目惚れしました。複数回にわたる上映は、チケット発売後、すぐに売り切れ。コンペティションの作品にこれだけの人が注目することは、ストックホルム国際映画祭29年間の歴史上初めてのことで、この映画が観客を惹(ひ)きつける力があることを改めて感じました」